日本通算2000安打の記念ボードを掲げる松井
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2015年7月28日だ。
ふわりと上がった打球を、ゆっくりとした足取りで眺めた。
「どうかな……あ、落ちるわ」
センターの
柳田悠岐が打球を追う姿を見て、
楽天の
松井稼頭央は日本での2000本目の安打を確信した。対
ソフトバンク戦(秋田)、1回一死の第1打席。
中田賢一の低めのスライダーに、巧みなバットコントロールで反応した一打。そのシーンは、やはりスローモーションに見えたのだろうか?
「うん、見えたよ。打球が遅かったから、見ている時間はたっぷりあったから(笑)。それをスローモーションって言うんか、分からんけどね」
試合後、秋田市内で行われた会見。壇上のスターは、茶目っ気たっぷりに笑った。
「正直、プレッシャーは感じていた。仙台でもあれだけのファンのみなさんに応援してもらって。この東北の、秋田のファンの前で達成できて、よかったなと」
節目の1本はプロ入り後に鍛え上げた左打席で打った。プロ2年目から挑戦するも、守備や走塁など課題は山積み。「だから、一度断念した」。2年目のオフ、ハワイでのウイン
ターリーグ。
西武の首脳陣からは「毎試合1打席でいいから、左で打たせてもらえ」と指示を受けた。だが、あまりに左打席の結果と内容が悪く、現地の監督からは「頼むから、もう左で打たないでくれ」と言われるほどだった。
順風満帆に見えるプロ生活。だが、その裏では幾度もの試練を乗り越えてきた末での大記録達成だった。
写真=BBM