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夏の甲子園名勝負

絶対王者・大阪桐蔭を鍛え上げた9回二死からの悪夢/夏の甲子園名勝負

 

いよいよ第101回大会を迎える夏の高校野球。1915年、つまり大正4年に始まり、昭和、平成という時代を経て、この夏が令和最初の大会でもある。昨夏、平成最後の大会となった100回までの長い歴史の中で繰り広げられた名勝負の数々を、あらためて振り返ってみる。

長谷川と柿木による緊迫の投手戦


敗れた大阪桐蔭の2年生右腕・柿木は涙した


 2018年の夏、第100回大会で春夏連覇を達成した大阪桐蔭。12年に続く2度目の春夏連覇は史上初で、17年のセンバツも制していたことで春の連覇となったが、同年の夏は3回戦で早くも姿を消していた。

 この夏だけチームが弱かったわけではない。1回戦では米子松蔭を圧倒。続く2回戦では、18年センバツで決勝を戦うことになる智弁和歌山との接戦を制した。そして、その3回戦も15年の夏に準優勝を果たした強豪の仙台育英との対決。試合は、乱打戦ながら1点が遠かった2回戦とは対照的に、投手戦となる。

 仙台育英はエース左腕の長谷川拓帆、大阪桐蔭は2年生の柿木蓮(現・日本ハム)が先発。長谷川が2回表まで2四球のみの被安打ゼロに抑えれば、柿木も失策や内野安打で走者を背負うも後続を断つ。

 大阪桐蔭の初安打は3回表の一死から。4回表には先頭で三番の中川卓也が二塁打を放ってチャンスを作ったが、四番の根尾昂(現・中日)から3者連続で二ゴロに抑えられた。長谷川は7回表まで22イニング連続無失点の快投。柿木も4回裏はクリーンアップを三者凡退に斬って取ると、6回裏、7回裏にも2イニング連続で三者凡退の好投を見せる。両者、ほぼ互角の投げ合いが続いた。

 そして8回表、ようやく試合が動く。大阪桐蔭は一番から始まる好打順。その一番の藤原恭大(現・ロッテ)は二ゴロに倒れるも、続く二番の山本ダンテ武蔵が二塁打、三番の中川が適時打を放って、1点を先制した。

 その裏、仙台育英は一死から代打の佐藤令央が右安打、九番の長谷川が四球、一番の西巻賢二が死球、二番の鈴木佳祐が左安打と立て続けに走者を出しながらも、盗塁死や走塁死などで得点に結びつかず。続く9回表は大阪桐蔭が、この試合で初めて3人で抑えられる。この両者の拙攻が伏線となった。

9回裏二死一、二塁からの遊ゴロが……


 迎えた9回裏。仙台育英は三番の山田利輝、四番の佐川光明と続く好打順ながら、中飛、三振と簡単に二死を取られてしまう。だが、五番の杉山拓海が中安打で出塁すると、続く六番の渡部夏史が四球を選んで、二死一、二塁に。土壇場で逆転の走者を出した仙台育英だったが、途中から一塁に入っていた若山壮樹の打球は遊ゴロとなる。

 このとき、送球を受けた一塁手の中川だったが、一瞬、足がベースから離れた。そして二死満塁、やはり途中から二塁に入っていた馬目郁也が左中間を破る2点適時二塁打。9回二死からのサヨナラ劇に、柿木の目には涙があふれた。

 翌18年は、その柿木がエースで、あの中川が主将。「100パーセントの確認」を徹底した大阪桐蔭は、異次元の強さを発揮していく。


2017年(平成29年)
第99回大会・3回戦
第11日

大阪桐蔭 000 000 010  1
仙台育英 000 000 002X 2

[勝]長谷川
[敗]柿木

写真=BBM
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