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川口和久WEBコラム

巨人最大の味方は暑さ? セ・リーグの首位戦線に異状あり!/川口和久WEBコラム

 

カギを握るのはドーム開催の試合数か


原監督の次なる手は


 真夏の8月決戦は消耗戦になりやすい。

 最近の夏は殺人的な暑さになるし、人間の体自体も暑さに対し、少しヤワになった。

 昔は扇風機くらいしかなくて熱帯夜が続くと寝不足の顔をしている人がたくさんいたが、それでも少しずつ暑さに体を慣らし(我慢し)、何とかしのいできた。

 今は会社も学校も交通機関も、みんな冷房完備。野球選手も快適な室内で練習し、いきなり炎天下の球場で戦っても、なかなかうまくいかない。
 必然的に、特に投手陣だが、少数精鋭の戦いより、常に疲労が蓄積していない新鮮な戦力を持っているところが有利になる。

 週べの誌面では、7月30日からの西武ソフトバンクの“地獄の3連戦”について書いた。キューバ出身のデスパイネが熱射病になるくらいメットライフの暑さはすさまじかった。
 暑さにやられたわけでもあるまいが、ソフトバンクは1勝2敗と負け越し、その分、涼しい札幌ドームでは、2位の日本ハム相手に2勝1敗と勝ち越し、首位をキープしている。

 WEBではセ・リーグの優勝争いについて書いてみよう。

 前回のコラムでは、「巨人原辰徳監督は、いろいろ試しながら戦ってきた。3ゲーム差以内くらいにならないと、まだまだ本気を出さないんじゃないか」という話を書いたが、なんと今や0.5ゲーム差だ。それでも、まだ原監督には笑顔が多いが、内心はどうなのかな。
 野手陣は炭谷銀仁朗の故障離脱は痛いが、まだ余裕はあると思う。ただ、投手陣はどうだろう。明らかに頭数が足りなくなってきた。

 巨人の歯車が狂ってきたのは、7月19日、マツダ広島での3連敗からだと思う。当時のカープは、酸欠で口をパクパクさせていた鯉みたいなもの。巨人にしたら「よし! ここで息の根を止めてやるか」くらいに考えていたのかもしれないが、投手陣が崩れ、もともとカープに抱いていた選手の苦手意識が一気に表に出たような負け方になった。
 言い方は悪いが、負け犬時代の記憶がよみがえったというか。
 逆にカープは、あそこから完全に息を吹き返した。

 連敗中の広島にあったのは息が詰まるような閉塞感だったと思う。打線は波があって当然なのだが、3連覇のときは調子が変わらない選手がドンといて、何人かが調子を落としても、それをうまく補完するサブの選手がいた。それが今年は調子が崩れだしたら一斉にドンと落ち、上がり出したら一斉にドンと上がる。
 投手陣がしっかりしていたら流れを止めて大型連敗にはならないものだが、今年のカープ投手陣には、そこまでの底力はなかった。
 今は四番の鈴木誠也がしっかり軸にいて、一番打者の西川龍馬が打ち始め、バティスタが帰ってきて、松山竜平もいい。打線が活気あふれ、酸素たっぷり。いきいきしている。
 もちろん、誰か故障者が出たら、また失速しかねない危うさはあるが、もう6月のカープみたいな泥沼にはならないと思う。

 大きいのは大瀬良大地が調子が悪いなりのピッチングができてきたことだ。8月2日、阪神戦の完封がそうだった。もともと完封は意外と調子悪いときにできる。立ち上がりを慎重に投げてしのいでいくうちに調子が上がり、いつの間にか、完封でした、という感じかな。
 
 先発の頭数もそろってきた。大瀬良、野村祐輔、ジョンソン、床田寛樹、あと忘れてはいけないのが、九里亜蓮だ。彼の貢献度はメチャクチャ高い。チームが厳しい時期に結果を出していたからね。

 投手陣が広島以上に安定しているのがDeNA。ここは先発が復活した石田健大今永昇太浜口遥大平良拳太郎上茶谷大河大貫晋一もいる。みんな若いし、あと1カ月半くらいは何とかやり繰りできるだろう。
 一方で、一番投手を計算できないのが、巨人の先発。桜井俊貴は頑張っているが、やっぱり菅野智之山口俊と幹となる大きな木があってこそだからね。クックを先発に、という話も出ていたが、どうなるのかな。

 ただ、俺は巨人には強い味方があると思っている。
 それが猛暑だ。

 8月6日からの試合日程を見てもらえば分かるが、ここからの8月決戦で巨人は18試合がドーム球場で、屋外はわずか5試合。広島は逆に14試合が屋外、横浜にいたっては17試合が屋外球場だ。

 俺が現役時代は、ドーム球場は気圧の関係で耳鳴りがしたり、圧迫感や変な暑さがあったりで嫌いという投手は多かったが、今は慣れもあるし、これだけ地獄のような暑さが続くと、まさに天国と言っていいんじゃないか。

 巨人独走のセ・リーグ首位戦線にまず異状を起こしたのはDeNAとカープだったが、次は、どれだけ猛暑が続くかがカギになるかもしれない。

写真=BBM
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