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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

甲子園の高校野球が、絶大な支持を集める理由

 

平成最後の夏の甲子園となった昨夏は金足農が準優勝。エース・吉田輝星日本ハム)は大阪桐蔭との決勝を終え、閉会式後にはマウンドの土を持ち帰っている


 さあ、いよいよ夏の甲子園が8月6日、幕を開ける。

 国民的行事。灼熱の夏を、心待ちにしている野球ファンも多いことだろう。大会初日は毎年、スタンドに足を踏み入れた瞬間に、身が引き締まる。きれいに整備された内野の土、緑の外野の芝生、そして青空によるコントラストがたまらないのである。

 朝7時。49地区代表校が入場行進する開会式まで2時間あるというのに、マンモススタンドのファンは、今か今かとボルテージが上がる。観衆のハイテンションが、甲子園独特のムードを作り上げ、球児のファインプレーを生み出す要因の一つとも言える。

 また、全国各地から集結する12球団のNPBスカウトも対象選手の最終確認と、新たな人材の発掘へと情熱を燃やす。ドラフト候補選手にとっては、人生を変える場でもある。

 これも時代の流れであるが、昨春から甲子園でも「タイブレーク」が採用され、今年4月からは「球数制限」が議論されている。タイブレークは同じ条件であるが、球数制限は選手層によって公平性が保たれないとの声もある。とはいえ、選手の健康が第一。来春からの導入も示唆されているが、多くのチームが納得する「着地点」を示してほしいと願う。

 甲子園の高校野球が、絶大な支持を集める理由は何か。

「負ければ終わり」という、ドラマ性が潜んでいるからだ。対戦するお互いが、心身とも極限状態を超えるからこそ、想定外のプレーが飛び出す。昨夏は、秋田勢103年ぶりの準優勝に輝いた金足農が感動を呼んだ。

 エース・吉田輝星(日本ハム)のほか、1人の交代選手もない「9人野球」。さらには、これまで春夏を通じて優勝経験がない東北勢の公立校が果敢にチャレンジする姿……。

 汗と泥にまみれた、さわやかな全力プレー。強打が全盛の時代でも、平成最後の夏に、スクイズを多用する「昭和の野球」を徹底。しかも、強豪私学を撃破していく構図。高校野球ファンのハートをつかむ、すべての要素が「金農旋風」には詰まっていたのである。

 最後まであきらめない、終盤の大逆転。甲子園に足を運ぶファンは「熱狂」を求めてやってくる。だからこそ、劣勢のチームほど声援が大きくなり、試合終盤にはアルプス席の応援リズムに合わせ、ネット裏から内野席、さらには外野席にまで「手拍子」が自然発生する。これも夏の風物詩ならではの光景だ。

 開会式がスタートする午前9時。バックスクリーン上部には、トランペット隊が悠然と控える。心に響くファンファーレを聞くと「夏が来た」と実感する。令和最初の甲子園。グラウンドとスタンド、全国各地から応援する視聴者が感動を共有できる名勝負、名場面を期待している。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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