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夏の甲子園名勝負

9回裏二死からの猛追をかわして中京大中京が43年ぶりV/夏の甲子園名勝負

 

いよいよ第101回大会を迎える夏の高校野球。1915年、つまり大正4年に始まり、昭和、平成という時代を経て、この夏が令和最初の大会でもある。昨夏、平成最後の大会となった100回までの長い歴史の中で繰り広げられた名勝負の数々を、あらためて振り返ってみる。

中京大中京は6回裏に打者一巡で6得点


試合後の中京大中京、日本文理ナイン


「野球は9回二死から」

 よく言われることだが、“あと1人”の土壇場から試合の流れが一変することは実際には多くない。それだけに、絶体絶命のピンチから死力を振り絞るような戦いぶりが、ファンを魅了し、その記憶に刻み込まれるのだろう。それが決勝という頂上決戦なら、なおさらだ。

 2009年、第91回大会の決勝は、9回二死から大きく動いた。リードしていたのは超名門校の中京大中京。新潟県勢初の全国制覇が懸かる日本文理が追う展開だ。しかも、中京大中京は、この年のセンバツでも9回二死までリードしながらも報徳学園に逆転負けを喫している。あの悪夢がよみがえるのか……。それは同時に、日本文理が起こすかもしれない奇跡への期待でもあっただろう。

 主砲の一発で激闘が始まった。1回裏、中京大中京はエースで四番の堂林翔太(現・広島)が二死から2ラン本塁打で先制。だが、直後の2回表には日本文理も連打で1点を返し、3回表にも高橋隼之介が左翼ポール際にソロ本塁打を放って同点に追いついた。

 ここからは堂林と日本文理の伊藤直輝による投手戦に。そんな状況が一変したのは6回裏だった。中京大中京は死球と連打で一死満塁とすると、堂林が勝ち越しの2点適時打。さらに1点を追加し、なおも満塁の場面で走者一掃の適時二塁打が飛び出して、この回、打者11人の猛攻で一挙6点を奪った。

 直後の7回表に日本文理も3連打で1点を返すも、その裏には中京大中京が2点を追加する。日本文理もあきらめず、8回表にも1点を返す。だが、まだ6点ビハインドと、点差は大きく開いたままだった。そして9回表、中京大中京は6回の途中にマウンドを降りていた堂林が志願の再登板。わずか6球で二死を奪い、エースの意地を見せる。だが、そこから堂林を上回る意地を見せたのが日本文理だった。

9回裏に日本文理も打者一巡で5得点も……


 日本文理は四球で走者を出すと、二塁打で1点、三塁打で1点。さらに死球を与え、マウンドを再び森本隼平に託す。だが、森本も日本文理の勢いを止められず、四球を与えて二死満塁となると、連打で3点を奪われた。ついに1点差。打者が一巡し、この回2度目の打席となったのが八番の若林尚希だったが、打球は三直に。わずかに及ばなかった日本文理ナインには笑顔が弾けた一方で、43年ぶり7度目となる夏の全国制覇を果たした中京大中京ナインには涙が見られた。


2009年(平成21年)
第91回大会・決勝
第15日

日本文理  011 000 115 9
中京大中京 200 006 20X 10

[勝]森本
[敗]伊藤
[本塁打]
(日本文理)高橋隼
(中京大中京)堂林

写真=BBM
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