日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。 失点しない確信
星稜の正捕手・山瀬(右)は小学生時代から奥川とバッテリーを組み、息の合った名コンビである(写真=宮原和也)
さすが、小学4年からバッテリーを組む捕手の言葉である。ただ、驚くばかりだった。
星稜は旭川大高と1回戦で初戦突破。1対0という僅差でシャットアウト勝利を飾ったのが今大会、話題を独占している158キロ右腕・
奥川恭伸(3年)である。
奥川の自己採点は「半分」と厳しかったが、スコア以上に楽に投げている印象だった。あわやという角度の大飛球には「風に助けられた」とも語ったが、失点する空気は感じなかった。
実は、失点しない確信があったのは、ボールを受ける
山瀬慎之助だった。
大勢のメディアに囲まれた試合後、謙虚な談話に終始する背番号1とは対照的に、背番号2は自信たっぷりのコメントを繰り返している。
「最低限のゼロで抑えるピッチングができた。力を抜きながら、ゼロに抑えられたのはよかった」
さらに、頭脳派捕手は配球面にまで言及。
「もっといろいろなパターン、いろいろな球種もある」
報道陣からの「なぜ、使わなかったのか?」という質問に対して、山瀬は「楽にカウントが取れる球種で、ランナーを一人出てもOKのピッチングをさせた。つまり、使う必要がなかった」と明かした。
ミットをはめる山瀬の左手は正直なのだ。余力を残しての初戦突破。底知れぬ魅力が詰まっている奥川。2回戦以降、どんな手を使ってくるのか。山瀬が出す右手のサインで決まる、星稜エースの投球から目が離せない。
文◎岡本朋祐(週刊ベースボール編集部アマチュア野球班)