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2019夏甲子園

[甲子園・記者コラム]スカウト視点で探る星稜・奥川の5つの魅力とは?

 

日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

松坂、ダルビッシュ、田中将クラスの完成度


星稜・奥川恭伸は旭川大高との1回戦で完封勝利を飾り、2回戦へ進出している(写真=宮原和也)


 なぜ、星稜・奥川恭伸(3年)がNPBスカウトから高い評価を受けるのか?

 旭川大高との1回戦で3安打完封(1対0)。94球という省エネ投球で、まさしく規格外のピッチングを披露している。

 複数のNPB球団幹部の話を総合すれば、今年10月17日に開催されるドラフト会議における1位競合は間違いないと言われる。

 この第1回目の入札でクジ引きになるのは、奥川と大船渡の163キロ右腕・佐々木朗希、153キロ右腕の明大・森下暢仁(4年・大分商高)の3人が有力だという。

 重複を回避して、単独指名に切り替える球団があるかもしれないが、ある球団幹部は「縁があって獲得できれば、何十年もローテーションの先発投手として任せられる。逃げずにいくことがベスト」と語る。

 奥川の良さは何か? NPBスカウトの視点から5つの魅力を引き出していく。

 まずは「完成度」。

「松坂(大輔=横浜高)、ダルビッシュ(有=東北高)、マー君(田中将大=駒大苫小牧高)クラスと完成度は一緒。佐々木投手(大船渡)も抜けていますが、甲子園で奥川投手のコントロール、キレ、変化球、球威を見せられると、どの球団も迷うのでは?」(ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスク)

 さらに、どの注目球児よりも上回る「経験値」。ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスクは「賛辞しかない」と、言葉を続ける。

「(全国優勝を遂げた)中学時代を含めて、実績が図抜けている。勝ち切れる投手。来年にすぐ先発ローテーションに入れるかどうかは、獲得球団による現場の声、育成法を含め、さまざまな角度からの検証が必要になってきますが、そのクラス(即戦力)であることは間違いありません」

 奥川は2年春から4季連続甲子園出場。今春のセンバツ1回戦では履正社を完封しているが、この日の完封とは意味が違う。ロッテ松本尚樹球団本部長は「進化」を語る。

「春の時点では力み倒していたが、今日はそれがなくなっていた。9イニングの中でゲームを作れる。つまり、打者を見ながら強弱をつけて投球できる。奥川投手と佐々木投手は別格です。これまで高卒で二ケタ勝利を挙げた投手がいますが、その中に入ってくる」

 ルーキーイヤーの1999年に西武松坂大輔は16勝、2007年に楽天・田中将大は11勝を挙げているが、奥川もその域の実力が備わっているとプロは分析する。

十分にある伸びしろ


 投手としての「潜在能力」に着目したのが、巨人・長谷川国利スカウト部長だ。

「腕の振りの柔らかさ、下半身の柔軟性。ウチのスピードガンでは最速154キロ(球場表示は153キロ)。アベレージが148キロですよ。マウンド上での落ち着いた立ち居振る舞い、プレートさばき。ピッチャーらしいピッチャーです。甲子園で一人だけ、社会人やプロがやっているような感覚に襲われました。奥川投手と佐々木投手と双璧です」

 最後に「人間性」にまで言及したのがオリックス古屋英夫編成部副部長だ。

「試合後のインタビューを聞いたんですが、受け答えがしっかりしている。現状に満足せず、次戦へ向けての課題も自己分析。高校生とは思えない人間力があると思いました」

 完成度、経験値、進化、潜在能力、人間性。18歳にして野球選手としての必要なパーツが備わっている奥川。さらに、付け加えておくと、すべてのスカウトに共通していたのが「伸びしろもある」ということ。

 喧騒の中でも奥川は冷静。ドラフト戦線において大船渡・佐々木、横浜・及川雅貴、創志学園・西純矢による「高校生BIG4」で騒がれていることにも、慎重に言葉を選ぶ。

「そう言っていただけるのはありがたいこと。でも、そんなに気にはしていません。仲間と野球をやれる喜びを何より感じている」

 星稜野球部のモットーは「必笑(ひっしょう)」。石川県勢初の全国制覇を遂げるまで、笑顔でナインを引っ張っていくことしか考えていない。その献身的な姿が全国の多くのファンの支持を得て、感動を送り届けるのだ。

文◎岡本朋祐(週刊ベースボール編集部アマチュア野球班)

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