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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ケガ人が抱える苦しみ。もがくソフトバンク・上林誠知

 

8月1日に誕生日を迎えた上林。本塁打を含む4打点の活躍で24歳をスタートさせた


 ファンが、首脳陣が、そして誰より本人が、待ちわびていた瞬間がやってきた。

 8月8日のウエスタン・広島戦(タマスタ筑後)で柳田悠岐が4カ月ぶりとなる実戦復帰を果たした。「四番・指名打者」でスタメン出場。2打席限定で快音は聞かれなかったが、第1打席の初球からフルスイングを見せ、グラウンドでは笑顔がこぼれていた。

 しかし、出番を終えて報道陣の取材に応じたとき、表情が一変した。「(左ヒザ裏の肉離れが)治るかどうか分からないという部分で不安……、不安な気持ちはありました」。声を震わせながら語った柳田の目には涙が浮かんでいた。

 4月7日のロッテ戦(ヤフオクドーム)の7回裏に三盗を決めた直後、左ヒザ裏に違和感を訴えて途中交代(翌8日に抹消)。当初の診断は左半膜様筋腱損傷(肉離れ)、全治3週間程度の見込みだった。それが4カ月もかかる重傷だったのだから、不安になるのも無理はない。症状が良くならない中でもリハビリを続け、ようやく打席に立てた喜びよりも安堵のほうが大きかったのだろう。

 今季、ソフトバンクはケガ人が相次いだ。ようやく傷の癒えた選手たちが徐々に増え始め、10日の2位・日本ハムとの直接対決3連戦(ヤフオクドーム)からは、中村晃福田秀平川島慶三和田毅が一軍復帰予定だ。

 とはいえ、一軍に戻ってきてもベストパフォーマンスができるかは別の話。ケガの後遺症もあってか、なかなか思うような結果が残せない選手もいる。今季の上林誠知は、その筆頭と言えよう。

 春のキャンプで腰周辺、開幕前にも背中の張りを訴え、極めつけは4月17日のロッテ戦(ZOZOマリン)でのデッドボール。後に右手薬指の剥離骨折(正式には『右第4中手骨掌側剥離骨折』)が発覚し、約1カ月の離脱を余儀なくされた。

 6月14日に一軍復帰したが、現在も「調子は上がったり下がったり」と上林。それは患部である右手甲の状態についても同じだ。違和感や痛みを覚えるときもあると言う。それでも懸命に前を向く。

「新しい“何か”をつかみたいと思っています。試合に出ている中で、また『これだ!』と思えることがいっぱい出てくると思うんで。まだ見つかっていない本当の自分の形を見つけたい」

 2年ぶりのリーグ優勝へ突き進むチームへの貢献を誓うとともに、自分探しを続けてもがいている。シーズン終了までに見つかるかは分からないが、わずかなきっかけでもいい。新しい“何か”をつかんだとき、上林は選手としてまた一歩、成長を遂げるはずだ。

文=菅原梨恵 写真=大泉謙也
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