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夏の甲子園名勝負

松井裕樹が10連続を含む1試合22奪三振!/夏の甲子園名勝負

 

いよいよ第101回大会を迎える夏の高校野球。1915年、つまり大正4年に始まり、昭和、平成という時代を経て、この夏が令和最初の大会でもある。昨夏、平成最後の大会となった100回までの長い歴史の中で繰り広げられた名勝負の数々を、あらためて振り返ってみる。

それまでは1926年の8連続が最多


三振で大記録を作った桐光学園・松井


「全打席でホームランを狙う」という強打者が観衆を魅了するのと同様に、次々に打者を三振に斬って取る好投手も魅力的だ。目立たない小さなプレーの積み重ねで勝利を呼び込む姿が野球の醍醐味であることは確かだが、こうした投打の華やかなプレーは豪快かつ爽快。堅実な送りバントを見て甲子園を目指す少年は少数派だろうが、本塁打や奪三振を見て甲子園にあこがれる少年は少なくないだろう。

 夏の高校野球における奪三振では、それまでは1試合19奪三振で5人が並んでいた。連続奪三振の最多は8連続で、時代が昭和となってすぐ、1926年に和歌山中(現在の和歌山)の小川正太郎が、当時は日本の統治下にあった満州から出場した大連商を相手にマークしたものだった。

 これらが更新されたのは2012年の夏、桐光学園と今治西の1回戦。連続奪三振は実に86年ぶりの更新となった。この“奪三振ショー”を演じたのは、桐光学園の2年生で左腕、現在はプロ野球の楽天でクローザーとして活躍する松井裕樹だった。

 鋭く落ちて、相手の打者に「消える」と言わしめたスライダーは、試合開始早々、威力を発揮する。1回表は一番、二番、四番から奪三振。その裏、桐光学園は三番から3連続死球で二死満塁とするも後続が倒れ、無得点に終わる。2回表は3者三振。その裏は桐光学園も2三振を奪われて三者凡退に終わる。3回表は1三振。その裏、試合が動いた。

 松井を援護したい桐光学園は一番から始まる好打順。四球と犠打に四番打者の適時打というセオリーどおりの手堅い攻撃で1点を先制した。4回表は2三振で三者凡退。その裏には桐光学園が1点を追加する。5回表も2三振で三者凡退。その裏には二死から松井が3ランを放って、5点差と突き放した。

最後は四番打者から22個目の奪三振


 6回表は無死から四球、この日の初安打となる中安打を浴びるなどピンチを招くも、そこから遊ゴロに2連続三振。7回表、8回表も連続三振で、これで8連続、ゲーム19奪三振とする。

 桐光学園の打線も7回裏、8回裏と1点ずつ追加して松井を援護。そして9回表、先頭打者で一番の池内将哉から三振を奪って、9連続と20奪三振の新記録を同時に達成した。さらに、続く代打の吉本夏輝からの三振で10連続。ここで今治西も三番の笠崎遥司が右安打で一矢報いて、連続奪三振は10で途切れたが、松井は最後も四番の末広朋也を三振に斬って取り、PL学園の戸田善紀(のち阪急ほか)のセンバツ記録も更新する1試合22奪三振で試合を締めくくった。


2012年(平成24年)
第94回大会・1回戦
第2日 第3試合

今治西  000 000 000 0
桐光学園 001 130 11X 7

[勝]松井
[敗]伊藤
[本塁打]
(桐光学園)松井

写真=BBM
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