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2017年WBC準決勝・アメリカ戦の菊池涼介のミスは防げた?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2017年のWBC準決勝、侍ジャパン対アメリカでの質問です。ドジャー・スタジアムに冷たい小雨の降るコンディションでしたが、4回、二塁の菊池涼介選手が正面のゴロを後方にはじき、このミスが相手の先制点につながりました。防ぐ術はなかったのでしょうか。あのとき、どのような対応が正しかったのでしょうか。(東京都・18歳)



A.早めに準備し右足で待てれば対処できたかも


正面のゴロを捕球できず、先制点につながる走者を出した菊池


 あまり人のミスについてとやかく言いたくはないのですが、今後、読者の方も含めて同じような場面が巡ってきたときに、対処(判断)するために、質問のシーンを分析してみたいと思います。

 日本もアメリカも序盤を両先発投手(※日本は巨人菅野智之)の好投で0対0で迎えた中盤戦でした。一死走者なしから、三番のイエリッチ(左打ち)を打席に迎えます。日本バッテリーは2ボール2ストライクと追い込み、投じたのは132キロの真ん中近辺へのカーブでした。会心の当たりではありませんでしたが、低いゴロで二塁の菊池涼介選手の守備範囲の右前方(菊池選手から見て)を襲います。雨で濡れた天然芝で、スリッピーな環境。実際に、打球は通常よりもバウンドごとに不規則な伸びを見せていたのも事実で、この打球に触れてはいたものの右後方に弾く形となりました。

 なぜ捕球ができなかったのか、また、はじくにしても後方だったのか。その原因は捕球のタイミングで右足が折れてしまったことが挙げられると思います。しかも、地面に着くくらいに。こうなってしまうと、もう、足を動かすことはできません。菊池選手の中では、追いついた、捕球できると感じたのかもしれませんが、足が止まったことにより、捕球直前での打球の変化(スリッピーな地面が影響)に追いつくことができなかったと感じました。

 私は昨年まで巨人の、そして現在は侍ジャパンのコーチとして内野守備を担当していますが、練習中、選手にはよく「右足を折るな」「右足で打球を待て」と話します。もちろん、どんな打球にも瞬時に反応するためです。足を折るというのは、捕球をあきらめた際の、体で止めるための、内野手としては最後の、最後の、最後の、最後の手段です。

 現地に行ったわけでもないですし、映像を見た上での分析ではありますが、果たして菊池選手が最後の手段として足を折ったのか、はたまた最初から足を折って対応しようとしたのか。そこが問題です。その点は定かではありませんが、右足を折るとバウンドによっては右後方に逸らしやすいですし、実際にそうなってしまいました。

 右足さえ折れていなければ、体に当てて前に落とし、素早い菊池選手ですから、一塁でアウトを取っていたかもしれません。つまり、早めに準備をし、右足で待てていれば、あるいは、対処できたかもしれません。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

写真=BBM
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