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川口和久WEBコラム

巨人の冷蔵庫で投打のベテランが飲みごろになっていた!/川口和久WEBコラム

 

巨人を救ったベテラン力


大竹の復活は本物だ


 先日、仕事の打ち合わせでTBSに入ろうとしたとき、警備員に呼び止められた。
 一瞬、焦った。「オレは、あおり運転なんてしてないよ」と。
 そしたら彼が
「川口さん、ウェブのコラム、いつも読んでます。面白いですね」
 と笑顔で言ってくれた。ありがとう。うれしいもんだね。

 では、本題。
 連日、猛暑が続いているが、この夏、一番活躍している家電は何だと思う?
 クーラー? 扇風機? 
 いやいや、冷蔵庫でしょ。日々の食べ物、飲み物もあるし、この時期、外から帰ってきて飲みごろに冷えたビールは最高だからね。
 DeNAパットンも、そんな大事なもの殴っちゃいかんよ。しかも、それで商売道具の右手の指を骨折したというんだからバカな話だ。

 ただ、ベンチで冷蔵庫を殴っている映像を見て、何となく「今年のDeNAのブルペンは、この冷蔵庫みたいだったな」と思ってしまった。
 小さい簡易タイプで次から次に選手たちが開けるから、なかなか冷えなかったと思う。DeNAのブルペンも開幕からフル回転でチームを支えた。パットンだって本調子じゃないときの登板も多かったと思う。
 もう少し“冷やして”、飲みごろで使ってもよかったかな。
 
 一方、いい塩梅で飲みごろまで待っていたのが、巨人の大型冷蔵庫だ。

 8月6日、巨人は6連敗し、Vに黄色信号がともった。
 翌7日の中日戦は、ここで負けたら一気にズルズル行きかねないゲームだったが、救ったのがスタメンに入ったベテランの阿部慎之助だ。
 五番に入って2ラン。あれは大きかった。

 勝敗だけじゃなく、慎之助が入って、間違いなくチームが締まった。
 12日の広島戦でも慎之助が五番に入り、マルチヒット。見ていると、すごく柔らかいスイングをしている。コンディションもいいんだろうな。驚異の40歳だね。
 優勝経験のある慎之助は、これからの巨人に絶対必要な存在。優勝するためにどういう野球をしていけばいいかを彼は分かっているからね。

 ただ、開幕からずっとスタメンで使っていたら、どうなったか。いまごろ、どこか痛めていたかもしれない。
 まさに飲みごろでの登場だ。豪華戦力の巨人だからと言うかもしれないが、絶妙のタイミングでのベテラン投入だった。

 投手では大竹寛だ。先発を期待されて広島からFAで来たが、ここ数年は結果を出せず、今年もファームで長く過ごした。
 それが12日から5試合連続無失点だ。

 ただ、後出しジャンケンではなく、俺は12日の登板を見て、「これはいけるんじゃないか」と思った。

 先発では失格の烙印を押され、正直、リリーフでもビハインド時の登板くらいかなと思っていたが、あの投球を見て、「勝利の方程式の中でも使える」と思った。

 ストレートの球威が戻りつつあることもあるが、最大の理由は、あのシュート。特に対右打者では、あのシュートでインコースを意識させれば、外にチェンジアップ、スライダーで十分牛耳れる。
 加えて最近のバッターの傾向として、最初は振り回すが、カウントが悪くなると引き付けて逆方向というのが以前より顕著になっている。引き付けたとき、あのシュートが来たら間違いなく詰まる。
 右打者メーンの1イニングなら、いい仕事をしてくれるはずだ。

 もともと大竹は意気に感じて投げるタイプで、「いけるか」というと「はい、大丈夫です!」とポンと元気に返してくれる。
イニングまたぎも気にしないし、ブルペンの雰囲気もよくなる。夏場の巨人の救世主であったことは間違いない。

 もう一人、こちらは自業自得もあって強制的に昨年終盤まで冷蔵庫に入っていた高木京介が、目立たないが、いい仕事をしている。
 彼は俺がコーチ時代に入ってきた選手で、身体能力が高く、球を高い位置で放せる。俺は彼をビハインドの場面でのリリーフとして育てようと思い、体の使い方など、いろいろアドバイスをした。

 コーチ時代、もちろん7、8、9回の勝利の方程式をいかに確立させるかに必死に取り組んだが、同じくらい大事なのが、先発が早めに崩れた場合、悪い流れを断ち切ってくれる投手だと思っていた。

 打たれたからと言って、次から次へと投手を使っていたらきりがない。もちろん、試合をぶち壊したらそこで終わりだから、試合の悪い流れを切り、我慢しながらつないでくれる投手の存在は、長いシーズンを考えても絶対に必要だ。
 京介には、その力はあったし、俺がコーチ時代、いい仕事をしてくれた。

 大きな回り道をしてしまったが、いいじゃないか、京介。大きな花は、これからゆっくり咲かせばいいんだから。

写真=BBM
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