一軍でプレーするのはそう簡単ではない

　夏の甲子園で活躍した選手は、その年のドラフトで指名されることも多い。昨年の100回大会では、優勝した大阪桐蔭高校から4人もの選手が指名され、プロの道に進んだ。特にチ―ムの中心だった根尾昂は、4球団から指名を受けるほど注目された、いわゆるゴールデンルーキーだ。では、根尾や同じように昨年の夏の甲子園で活躍し、プロに進んだ注目選手たちの現在はどうなっているのだろうか？
※成績は2019年8月19日終了時点のもの


●根尾昂（大阪桐蔭高→中日）

・一軍出場なし
・二軍成績
試合：88
打数：329
安打：60
本塁打：2
打点：23
打率：.182

　4球団から指名された後に中日に入団した根尾だが、自主トレ中の故障で出遅れ、オープン戦には出場したものの開幕一軍ならず。二軍で力を付けることになった。しかし、二軍でも苦戦が続いており、現在は打率.182で規定打席到達選手の中で最下位と、本来の実力を発揮できていない。現状を踏まえると一軍昇格はまだ難しいだろう。


●藤原恭大（大阪桐蔭高→ロッテ）

・一軍成績
試合：6
打数：19
安打：2
本塁打：0
打点：2
打率：.105

・二軍成績
試合：74
打数：289
安打：64
本塁打：4
打点：19
打率：.221

　藤原は春季キャンプから一軍に帯同し、オープン戦に全試合出場。ロッテでは1965年の山崎裕之以来となる高卒新人野手の開幕スタメンに抜擢された。しかし、6試合で2安打と結果を残せなかったため二軍で育成となった。現在イースタン・リーグで打率14位の成績を残しているが、打率は.221と物足りない数字だ。同じく高卒ルーキーの山下航汰（巨人）がリーグトップの成績を残していることを考えると、負けられないところだろう。


●柿木蓮（大阪桐蔭高→日本ハム）

・一軍出場なし
・二軍成績
登板：16
勝利：2
敗北：2
セーブ：0
失点：33
防御率：10.80

　大阪桐蔭高のエースとして甲子園優勝に大きく貢献した柿木は、日本ハムから5位指名を受けて入団。日本ハムに入団した他のルーキーたちと同じく春季キャンプは二軍スタートとなり、球団はじっくりと育成する形を取った。しかし、二軍ではこれまで16試合で33失点と、甲子園で見せた快投は影を潜めている。コントロールの悪さが原因で失点になるケースが多く、制球力アップが今後の課題だろう。


●吉田輝星（金足農高→日本ハム）

・一軍成績
登板：3
勝利：1
敗北：2
セーブ：0
失点：12
防御率：10.80

・二軍成績
登板：13
勝利：2
敗北：4
セーブ：0
失点：16
防御率：3.93

　二軍スタートした吉田だったが、イースタン・リーグでの活躍を受けて6月7日に一軍昇格。同月12日の広島戦で一軍初先発を迎え、見事に初先発初勝利を飾った。続く23日の中日戦では3回5失点で敗戦投手となり、30日に腰の張りのために二軍落ち。昇格をかけて挑んだ8月7日の試合では危険球のためわずか8球で退場したが、14日に再昇格を果たす。同日のロッテ戦に先発したが、荻野貴司に先頭打者アーチを浴びるなど3回途中6失点でKO。現在は再び二軍で調整中だ。


●小園海斗（報徳学園高→広島）

・一軍成績
試合：33
打数：109
安打：24
本塁打：2
打点：10
打率：.220

・二軍成績
試合：53
打数：210
安打：44
本塁打：6
打点：22
打率：.210

　広島の高卒新人野手としては「19年ぶりの開幕一軍スタート」をつかんだ小園だったが、残念ながら試合に出場することなく二軍落ち。しかし再び一軍に昇格すると、6月20日のロッテ戦でプロ初出場を果たした。その後も同じポジションの田中広輔がなかなか不調から抜け出せないこともあって、コンスタントに出場し、現在はショートのレギュラーに定着。1年目ながら現在好調の広島に欠かせない存在となっている。

　昨年の夏の甲子園を沸かせた高卒ルーキーの現在はこのようになっている。現状、一軍で結果を残しているのは小園だけで、ほかは本来の実力が発揮できていない状況だ。特に根尾をはじめとする大阪桐蔭の注目選手たちは難しい1年目を送っている。

　準優勝だった吉田も、プロ初先発初勝利で大きく注目されたが、その後がピリッとしない。注目のルーキーだからといって、プロで即通用とはいかないようだ。とはいえ、まだ1年目。焦らずにプロの体をつくり、技術を習得することに専念すれば、道は開けるだろう。

文＝中田ボンベ＠dcp　写真＝BBM