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2019夏甲子園

[甲子園・記者コラム]令和初の夏王者・履正社の強さの秘密とは?

 

日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

プロ注目右腕を打ち崩してV


履正社は決勝で星稜・奥川(背番号1)を攻略し初優勝を遂げた(写真=高原由佳)


 履正社の強さとは何だったのか。

 星稜の154キロ右腕・奥川恭伸(3年)を攻略しての夏の甲子園初優勝。11安打5得点とプロ注目右腕を打ち崩す、見事な戦いぶりだった(5対3)。1回戦から6試合で46得点と猛打を発揮している。

 技術的には、速球に振り負けないスイングスピードにあった。鋭い振りを生み出すためにはパワーが必要。今年のチームは冬場だけでなく、年間を通じてウエートトレーニングを積んできた。たとえを挙げると、せっかくオフシーズンに鍛え上げて100あった数値も、シーズンインとともに60〜70に消費されてしまう傾向があったからだ。

 冬の数字までとは言わないまでも、春以降もトレーニングを継続することで、猛暑の中でもパワフルな振りは衰え知らずであった。

 体力的な部分では「履正社スタイル」が大きな部分を占めていると言っていいだろう。

 ここ10年以上、大阪では大阪桐蔭と履正社が2強を形成する。

 対照的なのは、「24時間指導」で寮生活である大阪桐蔭に対して、履正社はほとんどの部員が通いであること。

 就任32年の履正社・岡田龍生監督は「違うやり方をしないと、桐蔭には勝てない。ウチの利点って何だろう?」と、模索してきた。

 そこで、最大限の協力をしてもらうのが父兄である。

「家庭での親の役割は大きい。学校としての指導方針を伝えていかないといけない。僕ら(首脳陣)の言うことを理解してくれるコーチみたいなものです」

 毎年12月には親、部員本人と別々の機会を持って面談し、コミュニメーションを図ってきた。「通いのメリットは大きい」と、帰宅後の栄養管理、しっかりとした休養などが最高のコンディション作りに大いに役立ったという。

 そして、最も大きい心理的な部分では「奥川恭伸」の存在が大きかった。手ごたえをつかんで挑んだ今春センバツの星稜との1回戦では3安打完封負け。17奪三振を喫し、自慢の強力打線が完全に封じられた。

「奥川君がチームを奮い立たせてくれた。皆の意識を高めてくれた。学習したことは多々ある」(岡田監督)

 具体的な目標設定。恵まれた環境。そして、高いモチベーション。全国3730校の頂点に立った履正社だが、岡田監督の挑戦は終わらない。夏を戦い抜くために必要な「打撃」には手ごたえをつかんだが、次に取り組むのは、さらに盤石な「投手力」。厳しい夏に向け、右肩上がりで状態を上げるためのトレーニング方法を模索していきたいという。大阪桐蔭をはじめ、全国屈指の激戦区・大阪を勝ち上がるには、歩みを止める時間はない。

文◎岡本朋祐(週刊ベースボール編集部アマチュア野球班)
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