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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

“小技”に沸いた101回目の夏。

 

習志野対沖縄尚学の1回戦。同点の6回一死満塁フルカウントから沖縄尚学・奥原がスクイズを決める


 150キロ超の速球に、豪華な本塁打に球場が沸く。履正社高(大阪)が初優勝を遂げた甲子園は、今夏も大いに盛り上がったが、とあるプレーでも甲子園がどよめいた。
 
 8月17日の第2試合。星稜高対智弁和歌山の3回戦は延長に突入し、12回を終えて決着つかず。13回からタイブレークへ突入。星稜高のエース・奥川恭伸の快投が球場を支配する中、13回表の智弁和歌山の攻撃は、先頭・佐藤樹が犠打の構え。それを防ぐべく、星稜の一塁手・福本陽生が猛チャージを仕掛けた。この“バントシフト”に球場がどよめく。

 1点をめぐる白熱の展開――。その1点の重みを理解しているからこその“大胆シフト”も、また野球の面白さに変わりない。なお、この犠打は星稜の守備に阻まれ、失敗に。その後も両軍、犠打を決められず、守備側が再三の阻止している。

 最後は14回裏に、星稜・福本のサヨナラ3ランと“大技”で決着がついたが、今夏はこの“小技”で、幾度も観衆を魅了した。

 時系列は前後するが、8月9日の第3試合、習志野対沖縄尚学の1回戦もしかり。沖縄尚学が2点を追う4回裏。水谷留佳、與谷友希、崔哲瑠の3連打で同点に追いつくと、なお一死三塁から奥原海斗のスクイズで勝ち越し。さらに同点の6回裏、一死満塁フルカウントからのスクイズに、観衆は沸きに沸き、今春センバツ準Vから再びリードを奪った。

「普段の練習でも『バントをします!』と声に出すと、周りからプレッシャーをかけられるんです。『一発で決めろ!』と。普段から、そうやって意識を高めてきた。だから、決める自信はありました」(奥原)。

 最後は習志野に再逆転を許して敗戦も、堅守と小技を駆使した野球でしまった好ゲームを展開。4強入りした明石商も、スクイズを多用するほか、三塁走者との“ヒットエンドラン”を駆使するなど、“細かなサインプレー”で多用した試合巧者だった。

 絶対エースの快投や、豪打の四番打者などがクローズアップされる中で、“小技”の醍醐味を再確認させられた101回の夏。大正、昭和、平成、そして令和とつながる甲子園だが、野球の本質そのものは不変だ。

文=鶴田成秀
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