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侍ジャパン壮行試合前に故・小枝守氏の功績を称えた素晴らしいセレモニー

 

侍ジャパン壮行試合「高校日本代表対大学日本代表」の試合前、故・小枝守氏(前侍ジャパン高校日本代表監督)の追悼式が行われた


 天国からほほ笑んでいるに違いない。

 8月26日、侍ジャパン壮行試合「高校日本代表対大学日本代表」の試合前セレモニーに先立ち、今年1月に亡くなった故・小枝守氏(享年67、前侍ジャパン高校日本代表監督)の追悼式が行われた。

 小枝氏は日大三高(東京)、拓大紅陵高(千葉)の監督を歴任した後、指導者生活の集大成と位置づけ2016、17年の侍ジャパンU-18代表を率いた。16年はアジア選手権(台湾)で優勝へ導き、17年はW杯(カナダ)で3位。

 約5分間、在りし日の映像が流れ、日本高野連・八田英二会長から感謝状、16年のアジア選手権に出場した早大・早川隆久(3年・木更津総合高)、17年のW杯に出場した丸山和郁(2年・前橋育英)から2大会のメンバー全員の名前が書かれたメッセージボードが贈呈された。その後は関係者によるフォトセッション、最後は拓大紅陵高の校歌で締められた。

 この日、高校日本代表の応援は拓大紅陵高と習志野高が合同応援団を組んで大演奏を展開(拓大紅陵90人、習志野203人)。試合中はお互いの応援歌のほか、星稜高・山瀬慎之助が打席に立った際は「星稜コンバット」が登場。習志野高・海老澤博顧問は試合前に「神宮は太鼓が使えないから難しいです。これほど、太鼓が応援において大きな役目を果たしているとは……」と困惑していたが、さすが名門吹奏楽部である。8月22日に行われた両校による唯一の練習の成果を、存分に発揮していた。

拓大紅陵・安藤聖麻学生指揮(左)と習志野・酒井悠歌部長(右)がポーズ。両校による合同演奏はパワー満点だった


 拓大紅陵高・吹田正人顧問は言う。習志野高の『美爆音』に対し、拓大紅陵高は『全力質奏(ぜんりょくしっそう)』がモットーだ。

「全力で質の高い演奏をするということです。小枝監督からは当時『この曲をやったら紅陵!!』という応援をやってほしいと依頼されまして、以降、私たちはオリジナルの曲で応援しています。今夜の演奏も、天国にいる小枝監督に届けば良いですが……」

 10分に及ぶ追悼セレモニーが行われたのも、野球への情熱、そして人望があったからにほかならない。故・小枝氏の弥生夫人は感謝の言葉を述べた。

「高校野球をすごく愛していて毎日、真剣に取り組んでいました。こうした場を設けていただき、家族としても名誉なこと。ありがたく思っています」

 2016年、小枝監督が率いた大学日本代表との壮行試合は地元・千葉のQVCマリン(現ZOZOマリン)で行われた。習志野吹奏楽部の計らいにより、拓大紅陵の『チャンス紅陵』が流れた。試合後に「良い演奏でしたね?」と問いかけると「聞こえましたよ!!」とうれしそうに語った、小枝氏の満面の笑みが忘れられない。

 壮行試合を前に功労者の功績を称える――。素晴らしいセレモニーだったと思う。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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