先発として693日ぶりの勝利を挙げた上原
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2008年8月28日だ。
巨人の
上原浩治が笑った。この日、東京ドームで行われた横浜戦。693日ぶりに、先発としてつかんだ白星に、自然とほおが緩んだ。「これ以上の笑顔は無理!」と声を弾ませた。初回、1点を先取された。7安打を許した。だが、7対1で勝利。仲間の好守備、援護射撃がなければ、手に入らなかったであろう白星だ。とにかく、先発として勝った。そのことがただ、うれしかった。
イバラの道だった。2年ぶりに先発へ復帰したこの年、まさかの開幕4連敗から悪夢は始まった。古傷を持つ左足太ももの不安から、投球フォームを見失った。今まで簡単にできていたことが、できなくなった。天才型だけに、1度歯車が狂うと、苦悩は深かった。プロの世界で築いてきた自信も、ぐらついた。二軍で約2カ月間、下半身を鍛え直した。
6月末、中継ぎとして一軍復帰。「状態は良くなってきていると思う」と繰り返したが、不安定な投球が続いた。8月、星野ジャパンの守護神として北京に渡った。結局、登板したのはわずか2試合。不完全燃焼だった。
どん底を経験し、右腕は少し変わった。復活白星を挙げた試合後、まずは感謝の言葉を口にした。5回を1失点。「正直、バテました。今日は自分以外の8人に感謝です」と仲間を称えた。だから、ヒーローインタビューは辞退した。
写真=BBM