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U-18W杯

佐々木朗希にアクシデント。U-18W杯に向けて見通しは?

 

高校日本代表の佐々木朗希(大船渡高3年)は8月27日の練習中、患部の中指を気にしながら、ずっと赤いタオルを握りしめていた


 佐々木朗希(大船渡高3年)は練習時、いつも右ポケットに赤いタオルを入れている。ハンドタイプではないから、動くたびにはみ出し、フラフラとさせていた。佐々木の母・陽子さんが2、3年前に景品でもらったタオルだという。春、夏の県大会を通じて愛用していたこの“勝負タオル”を、侍ジャパンにも持ち込んだ。どんなときも肌身離さない、大事なモノだとあらためて分かった。

 しかし、8月27日の練習は勝手が違った。ポケットではなく、ずっと右手でタオルを握りしめていたのである。それは、なぜか? 患部を必死に隠すためであった。明らかに、通常とは異なる行動。かえってアクシデントがあったと、見透かされてもおかしくない、一連の動きであった。

 前日、26日の大学日本代表との壮行試合(神宮)。高校日本代表の先発を務めた佐々木は当初、予定されていた2イニングではなく1イニング(三者凡退の無失点)でマウンドを降りた。球場表示は最速156キロ。NPBスカウトが絶賛した“全国デビュー”だったが、舞台裏では思わぬ展開となっていたのである。

 27日の練習後、右手中指の先端部分にマメができかけていたことが明らかになった(日本高野連が発表)。試合前、ブルペンでの投球練習時から違和感があったそうで、1回を投げ終えたところで自己申告。チームドクターが永田裕治監督へ報告し、それ以上の悪化を避けるため、降板が決まった。完治までの日数は個人差があり不透明。28日にはU-18ワールドカップの開催地の韓国・機張入りするが、しばらくノースロー調整が続く。

 日本高野連からの発表後、佐々木は取材に応じた。さすがに落胆の色は濃かったが、現実を受け止め、早期復帰へ努めると前向きに語った。日本高野連によれば、マメができた経験はないという。その原因について、佐々木はこれまでの蓄積と明かしたが、前日は2万8436人の大観衆での登板。いつも以上に力が入ったのは間違いなく、無理もない。たとえ12球であっても、本人には自覚がなくても、気づかぬ負担が重なった可能性は大だ。

 取材を終え、グラウンドから引き揚げる佐々木の姿を注視していた。マメが「公」になったことをどう受け止めているか、気になったからだ。しかし、練習中と何ら変わらなかった。右手には、赤いタオルが握りしめられていた。そこまで佐々木は、周囲から見られていることを警戒していたのだ。

 元プロの投手によれば、患部の状態が「軽症」ならば、3日もすれば投球を再開できるという。大会は8月30日に開幕する。オープニングラウンド5連戦が控えているが、ここは焦らず治療に専念すべきだ。9月4日の休養日を挟んで5日からのスーパーラウンド3試合、そして、同ラウンドの結果により8日の決勝というスケジュールである。初の世界一を目指すにあたり、大会終盤に照準を合わせるのが得策だ。いずれにしても1日も早い回復、世界舞台での快投を願っている。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦
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