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ポストシーズンでの“隠し玉”となるか。内海哲也が見せた心からの笑顔

 

手応え十分の復帰3戦目


西武内海哲也(キャンプ時撮影)


“西武ライオンズの内海哲也”が、初めて心からの笑顔を見せた。

「良かったです、本当に。久しぶりに気持ちよく寝られそうです」と目を細めたその表情は、安堵感に満ちていた。

 8月31日イースタン・リーグ西武対楽天戦(西武第二)で先発。初回、先頭打者・オコエ瑠偉にレフトのフェンス越えを許したが、その後、しっかりと切り替え、3回3安打2奪三振1失点と上々の内容で予定イニングをクリアし、マウンドを降りた。

 オープン戦で発症した左浅指屈筋の肉離れから復帰と再発を繰り返し、8月16日に二軍戦に戦列復帰。その初戦(巨人戦=ジャイアンツ)は、中継ぎとして6回にマウンドに上がるも、5安打2四球8失点と1つもアウトを取れずに降板した。2戦目となった22日の楽天戦(森林どり泉)では、先発として2回を投げ6安打1四球3失点。そして、この日が3試合目の登板だった。

 試合前、杉山賢人二軍投手コーチは、「ここまでの2試合は、“投げられたこと”を収穫としてきた。そこをクリアした上で3試合目に入り、ここからは結果を求めてほしい」と話していたが、内海本人も、「今日は結果でした」ときっぱり。その意味では、先頭打者ホームランは許したが、「スライダーも、2回以降はしっかりと腕を振れて、空振りも取れましたし、カウントも取れたのは進歩だと思います。それ以上に、3回を投げ切れたことが何より」と、手応え十分だった。

 目安だった50球未満の47球でマウンドを降りたことも、結果にこだわった一因だ。投手コーチから「もう1イニング行くか?」と促されたが、「良い形でマウンドを降りることが、次のステップに行くためのメンタル的な意欲にもつながる」と固辞。それはすべて、「次、5回を投げたい」との明確な意図があるからである。

「次の登板へ向け、まずはしっかりとリカバリーすること。そして、内容はもちろん、次は、ここまで1回、2回、3回とイニングを重ねてこられたので、飛び級で、もう1イニングプラスして、5回ぐらいを投げることが課題です」

 先発ローテーションに加わり、“次”を見据えられる喜びが、内海のモチベーションを最高に掻き立てている。

「とにかく結果がついてきてほしい」と、我が事のように祈る思いで復帰3戦を見てきた杉山二軍投手コーチは、この日の結果に心底安心しつつ、だからこそ、次回は“戦力”となるべく内容のさらなるステップアップをテーマづける。

「“内海哲也”というピッチャーは、内野ゴロを打たせるピッチャー。それが、ここまではまだフライアウトが多い。ということは、まだボールが1つ、2つ高い、もしくはまだ若干球に力がないのかなというところで、上に上げられてしまっているのだと思います。そこを、直球も変化球も低いところに投げて、内野ゴロでアウトが取れるか。内野ゴロの間を抜けていったヒットなら全然問題ないという内容が、結果とともに出てきてくれれば、本格的に楽しみになってきますよね」

焦らずに一歩ずつ


 この日、メットライフドームでナイトゲームを行った一軍は、首位・ソフトバンクとの直接対決を制し、ついにゲーム差なしにまで迫った。いよいよリーグ連覇、クライマックスシリーズ(CS)進出、さらには日本シリーズも本格的に視野に入ってきた。いま、上昇ムードが最高潮に高まっているチームにとって、もう1つ欲しい“何か”があるとすれば、内海の存在ではないだろうか。

 春季キャンプで早々にチームに溶け込み、その実績と野球に取り組む真摯な姿勢で絶大な人気と尊敬を集める元巨人のエースとともに戦える日を、ライオンズ戦士は待ち望み続けているのである。それは、ファンにとっても同じだろう。西武ライオンズを想う誰もが、「ライオンズのユニフォームを着た内海が一軍マウンドで投げる姿を見たい」と、心の底から切望している。

 当の本人は、「CS? 日本シリーズ? もちろん投げたいですよ! もちろん投げたいのは山々ですが、この状態。焦って焦って急ピッチで仕上げていっても、というのもありますし、何よりも、そういう佳境に入ったところは、1年ローテーションを守り抜いた先発投手がやるべきだと思います」と、礼を重んじ慎ましいが、ファンはどうしても期待してしまう。CSでの復帰、日本シリーズでの快投を。

 とはいえ、その期待があまりにも楽観的すぎることは、内海の言葉が何よりも物語っている。

「復帰を焦りすぎるあまり、今回も何回も失敗を繰り返してしまいました。なので、そこ(ポストシーズン)はちょっと置いておいて、今はまず、自分ができることを1日1日、最善を尽くしてしっかりとやってステップアップするだけ。その先に、ゴールが見えてくると思っています」

 それでも、チーム、ファンにとって、この日の好投を含めた内海の完全復帰へのステップアップは、今後の優勝戦線へ向けて最高の援護射撃となることは間違いない。

 ポストシーズンでの“隠し玉”となるか。大きな楽しみが、着々と爪を研ぎ始めた。

文=上岡真里江 写真=BBM
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