打線の中心にどっかりと座る四番打者。チームの“最強打者”が力を発揮しているチームは強い。シーズンも再終盤に差し掛かりつつあるが、パ6球団の四番打者事情を見ていこう（記録は9月2日現在）。

埼玉西武ライオンズ

　山川穂高の状態が上がらなかったこともあり、8月11日のロッテ戦（ZOZOマリン）から中村剛也が四番に座っている。かつて、長らくチームの四番を担っていた男はさすがの打撃を披露。ここまで四番で打率.347、5本塁打、20打点をマーク。状況に応じて軽打を見せるなど柔軟な打撃も巧みで、得点圏打率はリーグ2位の.367と無類の勝負強さを発揮している。中村が力強く打線をけん引していることもあり、チームも首位・ソフトバンクに肉薄。逆転優勝へ、このまま勢いを止めないで突っ走る。

福岡ソフトバンクホークス

　やはり四番がよく似合う。西武との首位攻防戦2連敗を受け、チームは9月1日にA.デスパイネを緊急昇格。さっそく「四番・DH」でスタメン出場すると、2点差に迫られた直後の9回一死二塁で中前適時打を放った。8月15日の試合前練習で左の腰付近に違和感を覚え、18日に抹消（左背部起立筋の筋損傷）。リハビリ組に合流し、ようやくフリー打撃を再開したところだった。実戦を経ないでの復帰にデスパイネ自身も「感覚はまだまだ」と言いながら、期待に応えるひと振りはさすが主砲だ。今季は2年ぶりに30本塁打にも到達した。少し前には柳田悠岐も戻ってきており、三番・柳田、四番・デスパイネの重量級コンビが相手バッテリーに脅威を与える。

東北楽天ゴールデンイーグルス

　今季はここまで最も多く四番に座っているのが島内宏明で47試合。「つなぎの四番」として打線の活性化に貢献し、その後は二番に配置転換されるなど、指揮官の期待に応える活躍を見せている。シーズン途中から四番に配置されたのがブラッシュで、この打順では43試合で8本塁打、33打点をマーク。来日1年目で苦労も多いが、その中で勝負強さが光っている。それ以外ではウィーラー、浅村栄斗、今江年晶が続くが、7月に巨人から移籍してきた和田恋も1試合任されている。現在23歳と若く、スケール感ある打撃が身上。将来のクリーンアップ候補としても期待されている。

千葉ロッテマリーンズ

　開幕四番を任されながらしばらく“定位置”をレアードに譲っていた井上晴哉が、終盤戦に向けて再び四番の座を取り戻しつつある。昨季は打率.292で99打点と完全覚醒と言える活躍を見せたが、今季は苦しんだ。思うように打撃の状態が上がらず、二軍調整を命じられた時期もあった。それでも四番に戻って5試合目となる8月29日の楽天戦（楽天生命パーク）では4対4の延長10回に決勝の23号ソロを放ち、チームの100日ぶりとなる3位タイ浮上に貢献。井口資仁監督も「四番の仕事」とうなった。昨季のキャリアハイ24本塁打を更新すればするほど、チームのAクラス入りが近づいてくるはずだ。

オリックス・バファローズ

　7月23日に故障から復帰すると、8月6日から四番で固定起用され続けるロメロ。一発を秘めつつ、コンスタントに安打も放てる助っ人が四番に座ったことで三番・吉田正尚の成績も上向き、得点力が格段にアップした。8月の月間打率は吉田正＝.407、ロメロ＝.385と強力クリーンアップを形成し、8月は14勝9敗と月間勝ち越しで4カ月ぶりに最下位を脱出。ただ、9月1日のロッテ戦（ZOZOマリン）で、走塁中に右ヒザを痛めて途中交代。逆転CSを期すチームの中で“四番”の離脱は大きな痛手となるだけに、状態が気になるところだ。

北海道日本ハムファイターズ

　チームの低迷とともに四番・中田翔のバットも湿ったままだ。ここまで打率.243、23本塁打と71打点は及第点の数字だが、得点圏打率は.209、さらに併殺数も14とチャンスをつぶす機会が目立つ。開幕こそ自身の劇的なサヨナラ打で最高のスタートを切ったが、その後はシーズンを通して調子の波が激しく8月13日には右手首痛で2年ぶりの二軍落ちも経験。主砲を失ったチームは白星から見放され、同月24日に緊急昇格するも結果は出ずに最下位にまで転落……。「情けない。自分が打てないのが悪い」と責任を背負い、残りわずかの試合数となった中で復調に向けてもがき続けている。クライマックスシリーズ（CS）圏内の3位・楽天まで5.5ゲーム差と厳しい現実を突きつけられているが、四番のバットなくしてチームの浮上もない。キャプテンでもあるこの男のバットが、逆転CS進出のキーマンであることは間違いない。

写真＝BBM