80人の中からMLBのシステムの中で指導され、20人に絞られたU‐18のアメリカ代表の選手たち。韓国の大会でどういう活躍をするのか楽しみで、日本にとっても脅威のチームとなるはずだ
8月20日、南カリフォルニアのJセラ・カトリック高校のフィールドに、MLB球団のスカウトが勢ぞろいした。お目当てはアメリカ代表のU‐18に選ばれた20人。8月30日から9月8日に韓国で行われるワールドカップで5大会連続の金メダルを目指すからだ。
その前に、初の対外試合に臨んだ。相手はブリュワーズの地区担当スカウトが指導してきたこの地区のトップ高校生相手に、21点を奪い一蹴している。U‐18の20人は例年6月のMLBドラフトの目玉だ。二代前はチームから10人、一代前はなんと16人が一巡指名された。
このチームも195センチ、83キロの長身から95マイル(約152キロ)の真っすぐを投げるミック・エイベル投手。守備が抜群のエド・ホワード遊撃手。この日2本の三塁打を放ち3打点のロバート・ハッセル外野手など大物がひしめく。
だがそれ以上に興味深かったのは、このチームがMLBとUSAベースボールが協力して始めた新プロジェクト「プロスペクト・ディベロップメント・パイプライン(PDP)」により結成されていることだ。
6月中旬から7月初旬の4週間、フロリダ州ブラデントンのIMGアカデミーに、全米から選りすぐりの80人を招待し、連日練習と試合、トレーニングの授業を受けさせた。彼らは2020年のドラフト対象の学年。指導するのはMLB球団のスカウトやコーチだ。
参加選手個々に応じた別々の育成カリキュラムを作り、指導している。加えてバリー・ラーキン、チッパー・
ジョーンズ、デレク・ジーター、ライアン・ハワードなどレジェンドたちも参加し練習を手伝った。
日本だと、依然プロとアマの間に垣根があってこうはいかない。アメリカではMLBが本腰を入れて、資金も人材も投入し、アマチュアのレベルを上げようとしている。言うまでもなくこの中から次代のMLBをけん引するスターが出てくる。80人のうち40人を選び、8月中旬はロサンゼルスで二次選考会、そこで20人に絞られ、20日の対外試合となった。
会場にはトラックマンやエドガートロニックなど最新のテクノロジー機器も設置され、細かくデータを取っていた。アメリカU‐18は12年、13年、15年、17年と4度のワールドカップを制し世界の頂点に立っているが、プロ・アマコラボのパイプラインシステムで、さらに強力なチームになるのは間違いない。
日本も見習うべき点があるのではないか。今年のチームの特徴は複数のポジションをこなす選手が少なからずいること。チームディレクター、フランク・ジャゴーダ氏が説明する。「捕手だけど内野も守れたり、外野手で投手もできたり、おかげで監督はフレキシブルに選手を起用できる。ロースター枠は20人と限られるから、とても助かる」。
ちなみにジャゴーダ氏は
大谷翔平やブレンダン・マッケイのMLBでの成功で高校レベルで二刀流は増えていくと予想する。「私は高校生にほかの球技も薦めている。いろんな種目をする方がアスリートとして長い目で見て成長できるからね」。
パイプラインの効果やいかに。ワールドカップでのチームUSAのプレーぶりが気になるところだ。
文・写真=奥田秀樹