昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 メジャーのサイン盗み大作戦
今回は『1968年9月23日号』。定価は60円。
いつからか分からないが、巨人・柴田勲が打席に入ると必ず客席から歌が始まるようになった。特に
広島市民は大合唱だったという。
あなたがかんだ、小指が痛い……。
当時の流行歌、「小指の想い出」である。
球界一のモテ男、柴田は、芸能誌でこの歌を唄っている伊東ゆかりとの交際を盛んに記事にされていた。
これまでも、頻繁に女性関係を報道されていた柴田だが、今回はかなり大々的。
いつもはのらりくらりと受け答えする柴田も「何度同じことを聞いたら気が済むんだい。ただの知り合いの一人にすぎないさ」と、さすがに怒っていたようだ。
巻頭の「暗躍するプロ野球の地下組織」という記事はサイン盗みの話で、かなり看板倒れ。
ただ、例として挙げられていた1902年の話は面白かった。
フィリーズであった事件らしいが、バッターボックスの中に電線を埋め込むという手法だ。
センター後ろから覗いて捕手のサインを盗むと、モールス信号のようにパターンを決めて電流を流して、その場所に足を置いた打者に球種をつたえていたというものだ。
ばれたのは、相手打者がスパイクで地ならししている際、たまたま、そこを踏んでしまい、ビリビリと電気を感じたことによる。
そのバッターは、そこから手で打席を掘り起こし、黒い電線を発見。その線を掘り起こしながらたぐると、フィリーズベンチにつながっていたというのだ。
日本では巨人・
牧野茂コーチの63年の話が載っていた。
巨人は西鉄と日本シリーズだったのだが、途中まで南海が独走で優勝確実と言われ、大逆転優勝した西鉄の情報がまったくなかったという。
牧野は
川上哲治監督に「任せてください」と言い、わずか数日で事細かな情報を仕入れてきた。
元西鉄のコーチに聞いたらしいが、当時、「よほどのカネを積まなければ、これほどは集められまい」とウワサされた。
ペナントレースでは
阪神が首位巨人を猛追。9月17日からの甲子園での直接対決4連戦が天王山と言われていた。
藤本定義監督は、
「勝負はこの4連戦にある。お客さんをたっぷり入れて、がっぽり稼ぎ、そして巨人をやっつけることができたら言うことなしや。ワシにうま逆転優勝のことをいくらしゃべらそうとしても無駄なことや。巨人戦が終われば大いに話してやるよ」
とこの人らしい怪気炎をあげた。
巨人、広島、西鉄、大洋、東映、
中日が訪れ、条件提示も行った静岡商高の
新浦寿夫は9月7日、巨人入りを発表した。
韓国籍でドラフト対象外と分かってからの争奪戦だったが、当の新浦は「これまで日本人として通してきたのに、嫌な気がした」と話していたという。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM