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U-18W杯戦記

[U-18W杯戦記]カウントダウンに入った佐々木朗希、奥川恭伸の「世界デビュー」

 

U-18W杯で世界と戦う日本代表。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

合言葉は「あの2人を投げさせたい!!」


U-18W杯(韓国・機張)で唯一の休養日となった9月4日。午後2時から2時間の練習を行った後、ホテル近くの焼き肉屋で「決起集会」を開いた。大船渡高・佐々木朗希と星稜高・奥川恭伸はいつも行動をともにしている(写真左から習志野高・飯塚、奥川、興南高・宮城、佐々木)


 チームの合言葉は一つだった。選手ミーティングでは自然と、こういった声が出たという。

「あの2人を投げさせたい!!」

 U-18W杯(韓国・機張)に出場している高校日本代表はオープニングラウンドを4勝1敗のグループB1位で、9月5日からのスーパーラウンド進出を決めた。

 投手は9人が登録されているが、一度もマウンドを踏んでいない2人がいる。

 大船渡高・佐々木朗希と星稜高・奥川恭伸だ。佐々木は8月26日の壮行試合(神宮)を先発で1イニングを投げた際に右手中指に血マメができ、以降はノースローが続いた。一方、奥川も準優勝だった甲子園の疲労から、国内合宿では別メニューでコンディションづくりに努めた。

 2人は韓国入りしてからキャッチボール、そして投球練習の再開と、徐々にピッチを上げてきた。その間、チームは8月30日からオープニングラウンド5連戦を消化。9月3日は2人そろってブルペンで熱のこもった投球を披露し、大会の休養日となった4日の練習は投手陣全体がノースローながら、2人は精力的に体を動かしたという。

 練習後、宿舎前で取材に応じた佐々木、奥川には、ようやく明るい表情が戻ってきた。

 奥川は意欲十分だ。

「投げられる状態にある。心も体も、ちょっとずつ甲子園に近い形に来ている。実戦から離れているので少し不安はあるが、やるしかない。今日1日で戦える状態にしてきた」

 投げられなくても試合中、ベンチで誰よりも声を出し続けた佐々木はチームメートに感謝する。

「つないでくれたので、結果を出して恩返ししたい。決勝へ行って、必ず、初の世界一になれるようにしたい」

 高校日本代表を率いる永田裕治監督は「(ドクター、理学療法士と)相談しながら、本人の意思も確認しながら」と慎重な姿勢を崩さない。立場上、この発言も仕方ない。

登板にGOサインが出たか


 ただ、明るい兆しであることは確かだ。チーム広報の日本高野連・竹中雅彦事務局長によれば「行ける状態と聞いています」と、GOサインが出たもよう。竹中事務局長は「ほうらせたい、とチーム全員で頑張ってきた。(今度は2人が)決勝ラウンドでこたえてもらう番」と付け加えた。

 練習後は宿舎ホテル近くの焼き肉屋で「決起集会」を行った。28日に韓国入りして以降、宿舎と球場の往復。初めての外食で、束の間のリラックスした時間を過ごした。

 奥川は全体集合から3日遅れの8月24日夜に東京合宿に合流して以降、いつも佐々木と一緒に行動している。野球の面でもお互いにアドバイスをする間柄で、会見中も顔を見合わせるなど、すっかり仲良し。しかし、戦いの場となれば勝負師に豹変する。永田監督は「キーマン、ラッキーボーイが出てきてほしい」と熱望した。20人全員で戦うことに変わりはないが、佐々木と奥川の戦線復帰を心待ちにしているのは当然と言える。

 グループAの上位3チームと対戦する「スーパーラウンド」はカナダ(5日)、韓国(6日)、オーストラリア(7日)の順で戦う。上位2チームが決勝、3、4位チームが銅メダルをかけた3位決定戦へ進出する(オープニングラウンド突破チームの勝敗を持ち越すため、日本は1勝1敗=アメリカに勝利、チャイニーズタイペイに敗退)。

 永田監督によれば、対戦カードによって投手起用を決めるが、2人の「世界デビュー」がカウントダウンに入ったのは間違いない。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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