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U-18W杯戦記

[U-18W杯戦記]高校日本代表に勝利を引き寄せる陰の立役者とは?

 

U-18W杯で世界と戦う日本代表。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

選手をサポートするスタッフの結集力


カナダとのスーパーラウンド第1戦で7回2安打1失点に抑えた先発・奥川恭伸(星稜高)。打者23人から18奪三振と圧倒したが、快投の背景にはスタッフによる強力サポートがあった


 U-18ワールドカップ(韓国・機張)に出場している高校日本代表は9月5日、カナダとのスーパーラウンドを5対1で勝利。オープニングラウンドから持ち越した通算勝敗を2勝1敗とした。6日は1勝2敗とした韓国戦が組まれている。相手はもう後がないだけに、激しい「日韓戦」が展開されそうだ。

 さて、勝利には必ず、理由がある。そして、影の立役者が存在する。

 今大会、初の「世界一」を目指している高校日本代表は昨年9月に「国際大会対策プロジェクトチーム」を立ち上げた。過去の反省を踏まえて、チーム強化を計画的に推進してきた。

 センバツ閉幕後の4月には「研修合宿」を初めて開催した。第一次代表候補選手に対して、国際試合へ向けた心構え(海外での生活適応、国際ルールほか)などの座学のほか、木製バットへの対応も、早い段階から指導することができた。高校日本代表チームの日下篤団長(日本高野連理事)は「こうした事前準備が『意識づけ』となり、今回の大会でも実を結んでいると思う」と成果を話す。

 そして今回、高校日本代表チームの組織としての大きな変化は、新たに「分析担当コーチ」のポストを設けたことにある。昨夏まで高知高を監督として率いた島田達二氏にその大役が任された。島田氏は2015年のU-18W杯(日本開催)では西谷浩一監督(大阪桐蔭高監督)をサポートするコーチとして銀メダル獲得に貢献。国際大会を知り尽くしている頭脳は今大会、相手チームの分析・研究に大いに生かされた。

 綿密なデータを作成し、ミーティングで「島田メモ」を配布して、映像と照らし合わせながら、相手チームを丸裸にしていく。試合中はネット裏の席でじっと、戦況を見守る。

 この日の対戦相手はカナダ。相手打線のスイングを見て、永田裕治監督は「緩急に弱い。変化球でカウントを取れる」と、先発に今大会初登板の奥川恭伸(星稜高)を試合当日の朝に指名したという。「生視察」した島田氏のアドバイスにも耳を傾けたのは間違いない。その目は確かだった。奥川は7回2安打1失点、18奪三振の快投を見せている。

 相手投手の対策もバッチリだった。島田コーチは4投手が投げてくるだろうと予想し、そのうちの3投手が継投し、予想がほぼハマった。投手交代の際には、ベンチからすぐさま「ストレートは140キロ後半、カーブは120キロ。スライダーは130キロ……」と相手投手のデータが伝達された。豊富な情報量が、勝利を手繰り寄せたのは言うまでもない。

「少しでも有益な情報を与えて、選手たちの不安を取り除いてあげたい」

 大会期間中、寝る間を惜しんで作業に当たっているはずだが、島田コーチは決して自分が前に出ようとはしない。

「理学療法士の先生は毎晩、夜遅くまでずっと、選手をケアしている。監督も気苦労がある。私は1パーセント、0.1パーセントでもチームに貢献できたらいい。僕は勝ってくれることが一番、うれしいんです」

 グラウンドに立つ選手をサポートするスタッフの結集力が、高校日本代表を支えている。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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