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ベースボールゼミナール

「ヒットエンドラン」「ランエンドヒット」の違いは?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.小学6年生です。「ヒットエンドラン」「ランエンドヒット」はどう違うのですか? また、どのような場面で有効ですか。プロ野球の世界でも使い分けをしているのでしょうか。(東京都・12歳)



A.ヒットエンドランはランナーがスタートを切り、バッターは何が何でもバットに当てることが基本


イラスト=横山英史


 いずれもベンチからのサインでランナー、バッターがリアクションを起こすもので、似ているようですが異なる戦術(作戦)です。

 簡単に説明すると、「ヒットエンドラン」はランナーがスタートを切り(このサインが出たら基本的には必ずスタートを切ります)、バッターが打ちます。このとき、バッターは必ずバットに当てることが求められるのですが、それはストライクゾーンを通過するもの以外、つまり、ボール球でもなんとか食らいついてバットに当てなければなりません。ランナーも、バッターがバットに当てることを前提でスタートを切っていますから、ボールだからといって見逃して、キャッチャーからの送球で二塁で刺されてしまうと、最悪です。

 また、“当てる”と言っても、アウトカウントによって、チームの決めごとによって当て方(打ち方の意識)が変わってきます。例えば、どこのチームでも無死一塁で「ヒットエンドラン」のサインが出た場合、バッターには確実にゴロを打つことが求められます。ゴロを転がすことがこの作戦の基本であり、特別な指示がない場合、一死でもこれは変わりません。バントに通じるところがありますが、バッターがアウトになっても一死二塁を、あわよくば打球が内野の間を抜けて無死一、三塁を作りたいというものです。

 ただし、一死の場面では無理にゴロを転がしにいくのではなく、ヒット狙いでスイングをしていいチームもあります(とはいえ、ボール球でも打たなければいけません。ただ、当てにいくだけでの意識とは違うということです)。

 一方、「ランエンドヒット」というのは、ランナーは盗塁をしますが、バッターは普通に打っていいというサインです。ボール球を打ちにいく必要はなく、ストライクでも狙い球と異なれば見送って構いません(カウントにもよる)。無死または一死一塁で、カウント3ボール2ストライクのようなケース(二死ならランナーは自動的にスタート)で出されることが多いサインです。ボールなら一、二塁ですが、三振で一塁にランナーをクギ付けにされたくない意図もあります。

 上級者向けですが、フォークが考えられるケースでも出ることが多いです。バッターは見逃せばボールで、ワンバウンドになることが多く、盗塁も成功させやすいからです。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。
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