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U-18W杯戦記

[U-18W杯戦記]日の丸を背負う重圧を経て石川昂弥はたくましくなる

 

U-18W杯で世界と戦う日本代表。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

世界で勝つ難しさ


高校日本代表で不動の「四番・三塁」を務めた石川昂弥(東邦高)はU-18W杯(韓国・機張)で悔しさを味わいながらも、今後に生きる貴重な経験を積んだ


 野球の怖さを知った。

 国際試合の厳しさを目の当たりにした。

 日の丸を背負う重圧は計り知れない。

 オーストラリアとのスーパーラウンド第3戦。U-18W杯(韓国・機張)で高校日本代表が決勝へ進出するには、この試合に勝つことが最低条件だったが、1対4と見せ場を作れず、敗退を喫した。日本は5位となり、最終日を前にしてメダル争いからも脱落した。

 台風の影響で試合前の打撃練習、守備練習はキャンセル。プレーボール後も猛烈な強風と雨により、集中力を維持するのは難しいコンディションだった。

 前日の韓国戦では、守りのミスが響いて延長10回タイブレークの末にサヨナラ負け。日本が2点リードした8回裏、痛恨の一塁悪送球で、2人の走者の生還を許し同点とされる失策を犯した三塁手・石川昂弥(東邦高)は、敗退と同時にグラウンドに泣き崩れた。

「東邦のエラーとはまた別物……。ここまでミスなしで来ていたので、ノビノビとプレーすることができていたんですが……。エラーした瞬間にいろいろと考えてしまって……。このミスを境に、日の丸の重みを感じてしまいました」

 しかし、試合は待ってくれない。翌日のオーストラリア戦は12時30分試合開始予定。つまり「ナイター→デー」という心身ともに過酷な日程に直面していた。

 石川はオーストラリア戦でも動きに精彩を欠いた。1点リードの2回表に一挙4点で逆転されたイニングでは、送球ミス(記録は内野安打)と捕球ミスが失点につながった。

「最初から最後まで流れが良くなくて、ズルズルいってしまった……。一番悪い、負け方。世界で勝つ難しさを知りました」

 前夜、石川は25時にベッドに入ったが、寝付けなかったという。

「自分自身も、思った以上に引きずってしまった。切り替えようとしても、思い出してしまうことがあった。負け方が負け方だったので……。体にキレがなかったと思います」

 守りのリズムが打席にも影響したのか、四番打者としても4打数無安打と本来の力を出し切ることができなかった。とはいえ、この独特のムードは、日の丸を背負った者にしか味わえない。石川は言う。

「上のステージでこの経験を生かしていきたい。すべての面でレベルアップしないと上では通用しない」

 石川の言う「上」とはプロである。

 今大会(対パナマ)で放った木製バットでの1本塁打を加え、高校通算55本塁打。右の大型三塁手は韓国での悔しさを糧に、「日本の野球を引っ張る選手になりたい」と、オーストラリア戦後には、気持ちを切り替えていた。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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