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一閃!DeNA・梶谷隆幸の“居合い”打ち

 

11日の巨人戦で澤村が投じた内角のボールを巧みにさばき、右翼へ4号2ラン。今季はフォロースルーで左手が早めに離れ「前」が大きくなった印象を受ける


 まさに“一閃”という表現がピッタリの一撃だった。9月11日の巨人戦(横浜)、7回一死二塁から梶谷隆幸が技ありの2ランを右翼スタンドに運んだ。打ったのはインローの非常に厳しいコース。巨人・澤村拓一が捕手の構えた通りに投げ切った153キロの直球を、居合いの達人が鞘から刀を抜き放つような腕の使い方で、バットを走らせた。

「最低でもランナーを進めること、バットに当てることを心掛けた結果、いいバットの出方をしてくれた」と本人が振り返る打球は、角度23度という超低空でスタンドに吸い込まれていった。元来がローボールヒッターではあるが、膝下の難しいコースを拾う技ありの一打に、おそらく澤村と大城卓三の巨人バッテリーもあ然としたことだろう。

 入団以来、理想の打撃フォームを追い求めてきた。同い年のチームメートである宮崎敏郎が大きくフォームを変えないのに対して、梶谷は頻繁にモデルチェンジ。ときにはシーズン中でさえ進化する。なかでも構えは、毎年新しくなっている印象だ。近年のテーマは三振の数を減らすこと。それに向けて意識と合わせて、形も変えてきた。

 すくい上げるようなスイングの軌道、一見すると泳いだような体勢からスタンドにたたき込むのは、一貫して変わらない梶谷の特徴だ。数年前、独特な打撃フォームについて聞くと、「気持ち悪いでしょ?けっして子どもたちのお手本となるスイングじゃありません」と自嘲気味に笑ったのを思い出す。

 ファームで過ごす期間が長かった今季、シーズンが佳境を迎えた8月末に一軍に合流すると、勝負強い打撃でチームの起爆剤となっている。生き物のように変わる打撃フォームは苦悩しながら、技術を極めようとする探求心の表れ。梶谷の試行錯誤は引退するまで続くのだろう。
文=滝川和臣 写真=桜井ひとし
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