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【MLB】IGC=インゲームコーディネーターとは

 

球場で起こったことをすぐにツイッターに上げ、ファンに楽しんでもらうインゲームコーディネーター(IGC)のトラビス・ミラー氏。今後もSNSや動画サイトを使いながらファンと球団を繋いでいく



 シカゴ・カブスのリグレー・フィールド。筆者の席はプレスボックス(記者席)の3列目なのだが、同じ列の右端に34歳のトラビス・ミラーは座っている。彼は会見場やロッカールームで監督や選手を取材しない。何をしているのかと尋ねたら、257万人のフォロワーを持つカブスの公式ツイッターのIGC=インゲームコーディネーターだった。

「ツイッターを通してファンにゲームで起こっていることを紹介する。試合前のイベントの様子、ラインナップの紹介に始まり、試合中はホームラン、好プレーなどハイライト。ビデオ、写真など素材は豊富に使えるので、年々内容は充実している」と言う。

 ホームランが出れば1分。ダルビッシュ有の三振奪取ハイライトも数回のクリックで提示できるそうだ。ツイッターはソーシャルネットワークゆえ多くの人が投稿してくる。中にはネガティブなものもある。どう対処するのか。

「建設的で前向きに使われるべき。マイナスの面だけを見るのは誰にとっても精神衛生上良くない」。ミラーが巧みだと思うのは、試合の内容によっていつユーモラスなツイートをすべきか、いつ引くべきか、いつ自虐的であるべきかなど心得ていること。

 8月15日のフィリーズ戦、ダルビッシュが7回無失点の好投をしながら、9回裏、ブライス・ハーパーの逆転満塁ホームランでサヨナラ負け。試合後のツイートは「フィリーズ7対5カブス」のみ。それになんと1489個の返信が集まった。実は彼はカブスではなくMLBに雇われているのだ。2016年は14球団、17年は21球団、今年は28球団とMLBアドバンスメディアが各球団のアカウントを統括するように変わってきた。

 ミラーはカブスのTV専門局・マーキースポーツネットワークや同球団のデジタルコンテンツマネージャーとも協力。プラス地元紙の記者のツイートにも目を光らせ、これはというものをリツイートする。

 去る8月18日リトル・リーグクラシックでのこと。主砲のアンソニー・リゾが試合中ダルビッシュに「日本の遊撃手にホームランボールをプレゼントしたい、通訳してくれ」と頼み、2人で和やかに贈呈するビデオをアップした。ダルビッシュとチームジャパンの記念写真も掲載。それをダルビッシュが自身のアカウントでもリツイートした。「彼のおかげで日本の人も私たちのアカウントを見てくれる。彼自身のツイッターのフォロワー数(204万人)はおそらく今のメジャーの選手では最多。協力できるところはできれば」という。

 8月16日の誕生日にはミラーが「ハッピーバースデー」とツイート、ダルビッシュも「サンキュー!!」と返信した。ちなみに今、MLB球団で一番フォロワーが多いのはヤンキースで342万人、2番がカブス、3番がブルージェイズの226万人。MLBの狙いはツイッターアカウントで、チームや選手をマーケティングし、スポンサーを得ること。そしてチケットを売ることなのだ。

ミラーは現場でファンとの絆を強められるよう工夫を凝らす。「カブスはYouTubeにも積極的、TIKTOKなどショートビデオも実験中」とさらなる内容向上を目指している。

文・写真=奥田秀樹
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