辻監督は苦しみながらも西武を連覇へと導いた
24日に敵地ZOZOマリンで
ロッテを12対4で下し、
ソフトバンクが
楽天生命パークで楽天に2対4で敗れたため、2年連続23度のパ・リーグ優勝を決めた
辻発彦監督率いる西武。だが、優勝監督インタビューで「正直、今年はしんどい戦いになるなと思っていた」と率直に明かしたように、その道程は苦難の連続だった。
10年ぶりのリーグ優勝を果たしながらクライマックスシリーズ・ファイナルステージでソフトバンクに敗れ、日本一の夢が破れた2018年シーズン。「悔しい。ここでシーズンが終わるとは考えていなかった」と涙した辻監督だったが、迎えた今シーズンは厳しい戦いを強いられた。
昨オフ、エースの
菊池雄星はMLBマリナーズに移籍し、127打点で打点王に輝いた
浅村栄斗は楽天へ、長年にわたり正捕手に君臨していた
炭谷銀仁朗は
巨人へ、ともにFA移籍でチームをあとにしていた。
案の定、主力3人が抜けたチームは開幕してからも苦しんだ。攻撃陣では三番に抜てきされた
秋山翔吾、浅村の代わりに二塁を託された
外崎修汰の調子が上がらない。開幕からシーズン記録のペースで本塁打を量産していた四番・
山川穂高も6月から急失速していく。投手陣では昨季16勝をマークした
多和田真三郎、
榎田大樹が出遅れ、先発ローテーションも思うように固定できない状態が続いた。
自慢の強打を前面に何とか勝率5割前後を維持してはいたが、首位をひた走るソフトバンクには7月9日時点で最大8.5ゲーム差をつけられ、後半戦を前に早々と連覇に黄色信号が灯っていた。
それでも辻監督は粘り強く手を打ち続けた。5月に入り、秋山を慣れ親しんだ一番に戻して復調を促すと、8月には山川を2シーズンぶりに四番から外して好調だったベテラン・
中村剛也を据える。外崎の復調、開幕からコンスタントに打ち続けていた
森友哉の爆発もあって、8月のチーム月間打率は.299、47本塁打、172得点と打線が猛威を振るい、17勝10敗で駆け抜けてソフトバンクを猛追した。
同じく8月のチーム防御率は5.44だったが、辻監督は「8月は投手が頑張った結果」と振り返る。
今井達也、
本田圭佑、
高橋光成といった若き先発陣を、登板数でパ・リーグ記録を更新した
平井克典、守護神として輝きを取り戻した
増田達至をはじめとするリリーフ陣が支え、打線の援護を守り切るというスタイルが形作られていったからだ。
「私は何もしていない。選手は言わなくても夏場に力を発揮してくれる。ピッチャーもいろいろ言われながら、増田や平井を中心にもがいて頑張ってくれた。野手はレギュラーが離脱することなく、戦い抜いてくれた。精神的、肉体的な強さが連覇につながった」
9月11、12日の天王山、本拠地でのソフトバンク2連戦。初戦を先発陣の柱となった
ニールの快投もあって4対1でモノにすることで、130試合目にして今季初の首位に立った。昨季は一度も首位の座を譲ることなくリーグを制覇したことを思えば、あまりに苦しい道程。だが、その後のデッドヒートを制し、リーグの頂点に立つという結末は同じ。見事な連覇だったと言える。
「選手たちは『主力が抜けても、オレたちは戦えるんだ』という意地を見せてくれた。選手たちの頑張りには私たちがびっくりするくらい、頑張ってくれた。ここまで来ることができたので、さらにチームを一つにして、日本シリーズに行けるように頑張る」
そう決意を新たにした指揮官。日本シリーズ進出を懸けたクライマックスシリーズは10月5日にファーストステージが開幕し、西武は9日から本拠地メットライフでのファイナルステージでファーストステージの勝者を迎え撃つ。昨季は叶わなかった日本シリーズの舞台、そして悲願の日本一へ向け、獅子の歩みは止まらない。
写真=小山真司