昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 バッキーへの高すぎた?期待
今回は『1968年12月30日号』。定価は60円。
前回と同じ号からもう少しネタを拾う。
しつこいようだが、今回も法大・
田淵幸一をめぐる
巨人側の動きについてだ。
田淵をドラフトで
阪神に“かすめ取られた”後、巨人は、「どうせ、田淵がうんと言わず、阪神は万策尽きるはず」と読んでいた。
その場合、田淵側とも話を合わせ、田淵が阪神に入団した後、
末次民夫か、
千田啓介+金銭でのトレードを阪神に申し出る予定だったという。
しかし、徐々に田淵サイドが阪神入団に傾き、さらにはマスコミに自分たちの裏工作(密会騒動)がばれたこともあり、今度は巨人が追い詰められ、11月下旬、正式に阪神にトレードを申し込んだ。
交換要員としてマスコミには、
「一、三、六、八、十二以外は」
と話していたという。
王貞治、
長嶋茂雄、
土井正三、
高田繁、
柴田勲以外なら、ということだ。
堀内恒夫も交換要員に挙がっていたというから驚く。
川上哲治監督の中に、それほどONに続く、若きスラッガーがほしかったということだろう。
結局、この話は交渉まで至らず、本当は誰を準備していたかは定かでない。巨人はその代わりというわけでもないのだろうが、大洋・
桑田武と捕手の
大橋勲の交換トレードを決めた。
10年選手のボーナスの金額交渉で東映の
張本勲、
中日の
江藤慎一がもめ、張本の巨人入りもあるのでは、とウワサがあったが、今回は巨人も静観するのではという声が多かった。
阪神で右手の親指を骨折し、近鉄入りしたバッキー。
どこも行き場がなく、近鉄が拾ったのかと思っていたが、少なくとも入団決定時には大さわぎになっていたらしい。
金銭トレードだが、近鉄から阪神に支払われたのは1000万円。
三原脩監督は、
「パ・リーグでバッキーの球を打ちこなせるのは張本、
アルトマン、
スペンサー、榎本の4人だけでしょう。ただ、いい捕手をつけなきゃいかん。あの変化球はなかなかこなせんよ」
と話していた。バッキー専用に阪神・
辻佳紀の獲得に動くとも言っている。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM