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【MLB】プロ15年目。これまでと違うレベルにいるダルビッシュ有

 

あらゆる変化球のコントロールも良くなり、今が一番いいと言い切りマウンドに上がっているダルビッシュ


 カブスのダルビッシュ有が後半戦で出している数字が興味深い。10試合に先発、60回1/3を投げて、防御率2.69、被打率.199、9回あたりの三振奪取数11.8は、サイ・ヤング賞投票で2位になった2013年の2.83、.193、11.9の記録と同レベルである。

 その上で全く違うのはストライク率が70.9パーセント(13年は62.5パーセント)、三振数/四球数は19.75(13年は3.46)と、MLBでも屈指のストライク率の高い投手になっていることだ。

 33歳のダルビッシュは「今が投手として一番いい」と断言している。日本時代も含めて、これだけコントロール良く、ストライクをたくさん投げられたことはないからだ。ダルビッシュが打ちにくいのは、球筋も球速も読みにくいから。90〜93マイル(約144〜149キロ)の速いカッター、84〜88マイル(約134〜138キロ)の遅いカッターを筆頭に、最近はカーブでも83マイル前後、75マイル前後(約120キロ)、70マイル前後(約112キロ)と三段階に緩急を付けられる。プラスフォーシーム、ツーシーム、スプリット、スライダーもある。

 どの球種もどのカウントでも使える。8月15日のフィリーズ戦は92球で7回、27日のメッツ戦は104球で8回を投げた。13年は110球以上を投げた試合が17度もあったが、より少ない球数で長い回を投げ切れる。中4日で、球数制限に厳しいメジャーの野球にしっかりアジャストした。

 もちろん、どんどんストライクを投げることにはリスクもある。ホームランである。今季の被本塁打は31本と最多。8月21日のジャイアンツ戦ではキャリアワーストの4本塁打を被弾した。今季のメジャーではオールスター・ゲームでアストロズのジャスティン・バーランダーが非難したようにボールがよく飛ぶようになっている。プラス、フライボール革命でみんなが打ち上げにくる。

 そんな中でストライクを投げ積極的に勝負すれば、効率的に打ち取れる反面、ホームランになりうる球も増える。前半ダルビッシュのストライク率は63.5パーセント、防御率5.01、被打率.225、WHIP1.34だった。後半は70.7パーセントで、2.69、・199、0.80。個々の数字は飛躍的に向上しているが、本塁打だけは、前半は82.3球投げて1本の割合が、後半は80球で1本とほぼ変わらない。

 ちなみにバーランダーも今季防御率2.52は2位、WHIP0.77は1位、三振奪取数264個は2位と素晴らしい成績だが、ストライク率69パーセントでホームランは33本打たれている。それでも防御率が悪くないのはソロ本塁打が27本と82パーセントを占めるからだ。

 一方ダルビッシュは、ソロ19本 2ランが11本、3ランが1本の内訳である。今のメジャーでは本塁打は仕方がない。ただ走者が出たら、気をつけないといけない。8月21日のジャイアンツ戦は4本中3本が2ランで、5回まで7点の援護をもらいながらリードを守れなかった。だがそれ以外は素晴らしいピッチングが続く。

 8月15日の試合の後、ダルビッシュは「今は違うレベルにある」と言い切った。33歳、プロ選手としての円熟期に登り詰めてきている。楽しみである。


文=奥田秀樹、写真=Getty Images
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