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プロ野球20世紀の男たち

高橋由伸、上原浩治&高橋尚成「20世紀の最後に新時代を予感させたG投打の若武者」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

いずれも巨人を“逆指名”


巨人・上原(左)、高橋由


 プロ野球が始まる2年前、1934年に誕生し、以降の20世紀、“球界の盟主”として君臨してきた巨人。特に高度経済成長期は絶大な人気を誇り、ドラフト制が始まってからは新人の入団に関するトラブルも多かったものの、その人気は20世紀の最後まで堅調だったといえる。

 かつては巨人への入団を希望しながらも、さまざまな事情で他球団で現役生活を始めることになった選手もいたが、93年の秋、ドラフトで大学生や社会人は意中の球団を“逆指名”することができるようになった。そして世紀末、その“逆指名”を経てドラフト1位で入団したのが、高橋由伸上原浩治だ。

 ともに75年4月3日の生まれ。高橋由は慶大から、上原は大体大からの“逆指名”だったが、入団は高橋由が98年、上原が99年と、1年の差がある。これは、その前後に多発していた、ドラフトで巨人へ入団できずに浪人、というパターンではなく、体育教師を目指していた上原が大体大の入試で失敗し、ここで1年間、浪人したためだった。

 上原は浪人の1年間で研究を重ね、理論に基づいたトレーニングで体が完成。大体大に入学したときには見違えるほどの成長を遂げていた。一方の高橋由は桐蔭学園高で1年生から右翼のレギュラーとなるなど、すでに全国区。慶大でも3年生の春に戦後8人目の三冠王となり、4年生の春には主将として優勝に導く。通算23本塁打は現在も連盟記録だ。そして2000年、やはり“逆指名”で入団したのが、2人よりも1日だけ早く生まれた左腕の高橋尚成だった。

 高橋由は1年目の開幕から右翼手として先発出場。そのままレギュラーの座を確保して、最終的には規定打席に到達して打率3割をクリア、グランドスラム3本を含む19本塁打に75打点。新人王は大学時代もライバルだった中日川上憲伸に譲ったが、セ・リーグの特別表彰を受けた。巨人の長嶋茂雄監督は高橋由を「20年に1人の天才」と絶賛し、コーチにも「あまり細かく指導するな」と指示を出していた。長嶋監督に怒られたのは1度だけだったという。

「2000年だと思うんですが、調子が上がらないとき、足を上げないでホームランを打ったとき、ベンチに戻ると、なんで自分の持っている形を崩すんだ、と怒られました」(高橋由)

 なお、長嶋監督には“ウルフ”と呼ばれだが、本人が嫌がったこともあり、定着しなかった。

20世紀最後の日本シリーズで日本一に貢献


 一方の上原は、19歳で過ごした浪人生活を忘れないために、背番号19を希望。“雑草魂”を掲げ、自主トレの初日に目標を訊かれると、

「“雑草魂”で流行語大賞を狙います」(上原)

 と笑った。そして、制球力とテンポの良さを武器に、指先の細かい感覚で落とし方を微妙に変えるフォークボールが新たなウイニングショットとなって、最終的には5月30日からの新人記録15連勝を含む20勝、179奪三振、防御率2.09で投手3冠、新人王に。なお、“雑草魂”も流行語大賞に輝き、有言実行も果たした。

 2年目の高橋由も4月の月間MVPに輝くと、5月には第66代の四番打者にも。34本塁打を放ち、チームメートの松井秀喜ヤクルトペタジーニらと本塁打王も争ったが、9月に外野守備でフェンスに激突し、鎖骨骨折で離脱。天才的な打撃と同様、果敢な守備も魅力ではあったが、それは諸刃の剣で、その後も守備中の故障に苦しめられることになる。上原は10月、ペタジーニを敬遠するように指示され、涙を流し、マウンドを蹴っ飛ばしたこともあった。

 翌2000年は、上原と1年目の高橋尚は、ともに9勝。高橋由は初の全試合出場も、1日ごとにフォームを変えた時期もあったほど苦しんだシーズンだった。

 だが、ダイエーとの日本シリーズでは、新時代を予感させるような活躍を見せる。高橋由は第3戦(福岡ドーム)と第5戦(福岡ドーム)の第1打席で先制の本塁打を放ち、その第3戦に先発した上原は8回3失点で勝利投手となり、第5戦は高橋尚が、

「大丈夫かと思うほど緊張しなかった」(高橋尚)

 と完封。若武者たちの活躍もあって、巨人は日本一という最高の形で20世紀を締めくくった。

写真=BBM
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