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2019ドラフト

佐々木朗希プロ表明会見の舞台裏

 

佐々木は記者会見でプロへの思いを述べた。あくまでNPB一本であり、MLBには興味を示さなかった


 10月17日に行われる「2019年ドラフト」で最も注目度が高い大船渡高・佐々木朗希の「進路表明会見」が10月2日、大船渡市内の大船渡市民文化会館「リアス・ホール」にて行われた。

記者会見会場となった大船渡市民文化会館「リアス・ホール」。同施設内は図書館もある


「プロ野球志望届」の提出期限はドラフト会議2週間前(3日)に設定されている。佐々木は1日、大安吉日に岩手高野連へ同書類を提出し、2日に日本高野連のホームページに公示された。

「進路表明会見」が開かれるのは、ごく一部の選手のみである。過去には2006年の早実・斎藤佑樹(大学進学を表明して、早大を経て10年のドラフトで日本ハム入団)、17年の早実・清宮幸太郎(現日本ハム)、そして昨年の金足農・吉田輝星(現日本ハム)くらい。つまり、野球ファンにとどまらず、国民全体が関心を示す場なのである。

17時43分の開場まで、多くの報道陣が並んだ


 開始2時間前に記者会見が行われる施設に到着すると、すでに数社のメディアが到着していた。テレビやスチールカメラマンは「好位置」をキープするために、早くも入口付近で列を作っている。

 9月24日に配布された学校からの取材要綱によると、同場所で別の催し物があるため、開場は17時45分と通達されていた。予定よりも会場設営が早まり、17時43分から報道受付がスタート。「腕章、ネームプレート、名刺、証明書」等の提示が義務付けられている厳戒態勢。大げさだが、「報道関係者」以外の入場を取り締まる上での措置だ。

 会場内はアリーナスペースであり、何もない。開場と同時に報道陣が総出で、イスを並べる作業が始まった。開会5分前、ようやく記者会見の場が整った。

受付での風景


 今春の沿岸南地区予選前の4月29日にも、同場所で共同記者会見が行われたが、テレビカメラ6台に報道陣約30人。正直、もっと多くのマスコミが集まるのかと思っていただけに「拍子抜け」だったのを覚えている。しかし、今回は30社79人。やはり、ドラフトともなると各社の反応も変わってくるのだ。

 定刻から5分遅れ、18時5分から記者会見が始まった。

 まずは学校側から会見に関する留意点の説明があった。気になる点があった。前回、4月29日は会見を前に、学校側から「注意事項」。それは、プライベートに関しての質問は禁止だった。野球以外のことを聞いてはいけないという「規制線」が張られた。佐々木は小学3年時、2011年3月11日の東日本大震災で被災した過去がある。今回に始まったことではなく、その部分には学校サイドとしても、神経質になっていたのである。しかし、今回はそういった通達はなかった。つまり、何を聞いても良いのである。

50社79人の報道陣が集結。テレビはハンディタイプを含めて13台が並んだ受付での風景


 まずは、吉田祥校長からあいさつ。そして登壇者の紹介。登壇したのは佐々木、同校の吉田校長、野球部・國保陽平監督、野球部・吉田小百合部長の4人であった。

 そして、ついに、佐々木の口から進路表明。

「本日は私のために、お集まりいただき、ありがとうございます。今日の午前中にプロ志望届を受理していただいたことをご報告いたします。本日はよろしくお願いいたします」

 15秒にわたって、決意を述べている。

 次にENG(テレビ)による質疑応答。幹事社が質問をし、その後、各社から質問が投げかけられた。計10分。

 次にペン取材。幹事社、各社から質問があり、こちらもちょうど10分で終了した。記者会見後の「囲み取材」(記者が取り囲んでの立ち話)は一切なし。これまであまり、触れることのできなかった震災に関する質問に対しても、佐々木はこう毅然と答えている。

「被災したときに、たくさんの方々に支援していただいたので、その恩返しをできたらと思います」

 覚悟を決めた。

「大船渡の代表として、気仙地区だったり、あるいは、岩手の代表として頑張っていきたいなと思っています」

 唯一、プロへの意志表明を口にした。

「プロに入ったら、タイトルがあると思うんですけど、それをすべて取れるようなピッチャーになりたいと思っています」

 一連の会見が終わると、写真撮影の時間は5分。やや恥ずかしそうな表情で、佐々木はカメラマンのポーズの要望に応じた。

 18時35分。事前のスケジュールどおり、ちょうど30分で記者会見は終了した。昨年は会見後、金足農高・中泉一豊監督は数分の囲み取材に対応しているが、今回の國保監督は応じることなく、佐々木とともに会見場を後にした。

 運命の日を前にして、佐々木が公の場に出てくるのは、この日が最後。10月17日のドラフト当日まで、佐々木がメディアの前で口を開くことはない。果たして「令和の怪物」には何球団が重複するのか。そして、何を発信するのか――。興味は尽きないところだ。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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