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【MLB】 しっかり治し、リハビリは選手として進化できる良い機会

 

左ヒザを手術し、右ヒジと2カ所のリハビリから復帰を目指すエンゼルスの大谷。これをいい機会として、しっかりと治し、進化を目指してほしいものだ



 エンゼルスの大谷翔平選手が左ヒザ膝蓋骨(しつがいこつ)の手術を受けた。来季は昨年10月トミー・ジョン手術を受けた右ヒジと、今回の左ヒザと、2つの重要な個所に気を遣いながら、二刀流復活を目指す。

 開幕出場について本人は「僕自身は出られると思ってますし、そのために頑張りたい。ポジションも確約されているわけではないので、勝ち取りたい」と決意を述べている。

 野球選手にとって手術からの復帰は大変なことだが、その個所が2つとなるとより困難。自身、現役時代にヒザの故障に悩まされ続けた松井秀喜氏は、9月ニューヨークの野球教室で「しっかり治すしかない。しっかり治してまた頑張る。私の場合はシンプルなことしか考えていなかった」とエンゼルスの後輩にエールを送っていた。

 一つ参考になるかと思うのは大谷と同年齢のドジャースのコーリー・シーガー遊撃手である。新人王、2度のオールスター、2度のシルバースラッガーと若くしてスターになったが、2018年は4月にトミー・ジョン手術。8月に左臀部の手術とほぼシーズンを棒に振った。

 ヒジの手術の後は患部を90度に固定され、臀部の手術後は、足をベッドに上げたり下ろしたりするのもままならない。シーガーは不自由なリハビリ期間、新しい取り組みをして進化の道筋をつけた。

 頑張り屋の性格ゆえ、オーバーワークになるきらいがあったのだが、ドジャースのスタッフの指導の下、科学的アプローチを試した。足首、ヒザ、お尻などの動きをバイオメカニクスで解析、より効率的にフレキシブルに動けるよう、トレーニングを積んだ。

 続いて食べ方も変えた。もともとピザが大好きで、乳製品も取り過ぎていたが、手術後、身体も動かせないのに同じように食べていては確実に太る。栄養学の知識を身につけ体脂肪を減らし、今年のキャンプはスリムになって現れた。おかげで遊撃の守備は手術前より向上している。

 一方で打つ方はなかなか結果が出なかった。二番から四番を打ってきたが、5月中旬になっても打率.230程度で、五番から七番に下げられた。6月になり9試合連続安打と調子を上げたが、ハムストリングスを痛め再び1カ月の戦線離脱。その期間に打席でのアプローチを考え直した。

 今までは初球からどんどん振るタイプだったが、狙い球を絞るようにした。9月は6本塁打で10試合連続安打中。OPSも.800を超え、プレーオフを前に調子を上げている。ケガは慌ててもすぐに治らないし、時間をかけてしっかり治さねばならない。その期間に発想を転換し新たな取り組みができれば、新たな進化を遂げられる。

 大谷は、多額の契約金が欲しければ、MLBの国際選手獲得の(25歳)ルールに合わせ、このオフのメジャー挑戦でも良かった。だが彼にはお金よりも大事なものがあり、2年も早く来たお陰で多くのものを得られたと言う。その一つは2年目の今季、思うような成績を残せなかった悔しさだ。

「悔しい気持ちがあるのは、高いカベにぶつかったから、(日本に)残っていては得られなかったものもある。いっぱい学ばせてもらっている」。失敗もケガも成功の基なのである。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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