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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

広島・佐々岡新監督への期待と、その課題

 

投手陣の安定が大きなポイント


佐々岡真司新監督。就任会見では「好きな球団で(監督を)できる喜びが強い。恩返ししたい」と語った


 10月7日、広島の来季からの監督が、佐々岡真司新監督になることが発表された。

「全身全霊を込めて務めさせていただきます」と決意を語った新監督は、一軍投手コーチからの昇格で、チームの内情も分かっており、まずはある程度安定したチームの継承が行われると見てよさそうだ。そこで、ここでは「佐々岡政権下」での今後数年を、ある程度長めの視点を含めて展望し、そのチームづくりへの期待と、その課題を考えてみたい。

 まず、佐々岡新監督の専門分野の投手陣から考えてみよう。今季、一軍投手コーチとなって、チーム防御率を前年の4.12から3.68へと改善した新監督が、最初に取り組むべき課題は勝ちパターン継投の確立だろう。今季は3連覇を支えた抑えの中崎翔太とセットアップの一岡竜司が不調に陥り、32試合の逆転負けを喫した。フランスアを抑えに回し、セットアップは過去の実績にこだわらず、レグナルト中村恭平遠藤淳志菊池保則と、そのとき調子のいい投手を回す形で何とかやりくりしたのは、投手コーチだった佐々岡新監督の手腕だが、できればシーズンを通して任せられる形を確立したいところだ。果たしてだれに適性を見出し、育てていくことになるか。

 実はこのリリーフ陣の顔ぶれにも少し表れているのだが、カープの投手陣の構成は、これからベテランになってゆく30歳手前から30歳ぐらいの選手と、20歳前後の若手が多く、現状25歳前後の「佐々岡政権下で働き盛りの年齢になる選手」が少ない。先発では今年頑張った床田寛樹、あとは抑えのフランスアぐらいだ。岡田明丈をいかに復活させるか、ケムナ誠をどう伸ばすかが、まず佐々岡政権の投手陣の安定の大きなポイントになるだろう。

 これからだんだんとベテランの域に向かってゆく大瀬良大地九里亜蓮らの世代の選手寿命を長く保たせることと、今季経験を積んだ遠藤淳志、山口翔に、アドゥワ誠、そしてトミー・ジョン手術からの復活を目指す高橋昂也ら20歳前後の世代(野手で言えば「小園世代」に近いところ)の投手を早く一本立ちさせて、働き盛りの世代の手薄さをカバーしたい。この若手世代は結構可能性を秘めているので、今後、社会人、大学から同世代の選手を加えれば、将来、投手王国を形成することも夢ではない。

主力流失に備えたチームづくり


 さてしかし、投手陣より、新監督にとって難しいのは野手陣だろう。これは監督というよりフロントの仕事になるが、何と言っても心配なのは、昨年の丸佳浩(現巨人)に続く3連覇メンバーの流出だ。まず今オフは會澤翼の残留を実現させる必要があるが、菊池涼介のメジャー挑戦希望再燃の可能性もあり、その先には田中広輔、さらにその先には鈴木誠也のFA権獲得が控える。

 もちろん残留交渉が成功すれば言うことなしだが、これらの選手は年俸面や出身地、メジャー志向などの条件を考えると流出の可能性が低いとは言えない。カープも最近の観客動員やグッズ販売の好調さを見ると、これまでに比べれば資金力はあるはずだが、今後、クシの歯が抜けるように3連覇メンバーがいなくなる危惧はないとは言えず、これに備えたチームづくりはやはり必要になってきそうだ。

 次代の野手のチームづくりとしては、現在20代半ばの鈴木誠也と西川龍馬野間峻祥が中心となり、あとは高橋大樹の開花に期待。少し年上の磯村嘉孝が現在の會澤のような立場でチームをまとめ、内野は順次、昨年数多く入った「小園世代」に切り替えて、その成長を促す。そしてファースト、サードあたりを外国人選手でカバー、というのが構想のベースになるだろうか。ただその場合も、鈴木から小園世代への「3連覇の遺伝子」と言えるチームスピリットの継承を途切れさせずにやらねばならない。新監督が投手出身だけに、野手の担当コーチがどれだけ早く「小園世代」の選手を伸ばすことができるかがカギになりそうだ。

 こうして考えると、この先しばらくはともかく、投打ともに、選手層が薄くなる可能性のある3、4年後をいかにチーム力を落とさず乗り切れるかが、「小園世代」でまた黄金時代を迎えるための、カープにとっての課題になってくると予想されるのだがどうだろうか。

 そして、新監督にとって難しいのは、そこに対する備えを、順位を落とさない中で進めていかなければいけないところだ。2016年の優勝より前は、ファンは気を長くして待ってくれたが、3連覇を経験したあとでは、ファンの要求はより高いものになっているはず。常に優勝争いできる戦力を維持しつつ、かつ、3、4年後にチーム力を落とすことがないように備えながら、3連覇のスピリットを「小園世代」につないでゆく――。結構な難事業のようにも思えるが、せっかく「勝ち方を知るチーム」になったのだから、これを伝統にしない手はない。

 それができるかどうかは、まさにこの先数年が勝負。「若手を使いながら勝っていくのがカープの野球」という新監督が、その難事業をどういうバランスで実現させていくかは注目だ。将来、また黄金時代を築くべく、新監督の手腕に期待したい。

文=藤本泰祐 写真=BBM

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