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【MLB】ナ・リーグ式二刀流のパイオニア/マイケル・ロレンゼン

 

ナ・リーグでの二刀流成功を目指すロレンゼン。試合ではセンターで先発し、リリーフでマウンドに上がるという大谷とは違った形での挑戦を続けている


 9月27日、レッズの27歳、マイケル・ロレンゼンは二刀流の最終テストで見事に結果を出した。中堅で先発し7,8回はリリーフで2回を投げ、8回には勝ち越し打を放ち、9回は再びセンターを守った。

 打撃成績は4打数1安打1打点、投げては2回無安打の好投、中堅での守備機会は7度あり、広い守備範囲を披露した。優勝争いから脱落したレッズは9月、ロレンゼンを本格的に二刀流で試した。投げて(すべてリリーフ)打って守ってという試合は6度あり、特に9月4日のフィリーズ戦は本塁打を放ち、勝ち投手になり、野手も守るという1921年6月13日のベーブ・ルース以来の快挙を成し遂げ、「ルースの記録の隣に自分の名前を並べられるなんて」と興奮していた。

 そして最終テストは、野手先発6度目で、初めて途中でマウンドに上った。9月18日に本人に話を聞いたのだが、「体も二刀流にうまく対応できている。昨日(17日)はリリーフで1回1/3を投げた後、最後のイニングはまたセンター。今日も体の状態は悪くない。今、うちの球団は実際に二刀流でどれくらいできるか、結果と、体の負担について知りたがっている。実験はうまくいっている」と話していた。

 才能はものすごい。投げては真っすぐで平均97.2マイル(約156キロ)を出し、打っては平均打球速度が時速95.7マイルとトップクラス、スプリントスピードも28・2マイルと快足だ。ロレンゼンは2103年のドラフト一巡目入団。15年にメジャー昇格。その年は先発投手だったが、16年からリリーフへ。18年大谷翔平のデビュー年、球団は14度代打で起用、全部で34打席に立たせると、4本塁打を放ち、球団も真剣に二刀流テストを考え始めた。

 レッズのディック・ウィリアムス編成本部長は2年前、大谷獲得に熱心に動いていた。「一生懸命にリクルートしていたとき、起用方法、試合準備のルーティン、ナ・リーグゆえ、どう守備をさせればいいかなど細かく研究した。われわれの二刀流への取り組みはあのときに始まった」と振り返る。

 ロレンゼンのほうも大歓迎だった。「私はプロの投手の中には打ったり、守ったり、ほかのエリアでもとても才能がある者がいると知っている。いろいろなことができる投手はその才能を生かすべき。チームはケガを恐れ過ぎている。投手も十人十色でみんなが同じではない。投手だからこれはできない、あれはできないと決めつけるのはおかしい」と言う。

 ロレンゼンは高校時代のポジションは中堅手だった。「ドラフトにかかりたかったから、中堅手に専念した。当時プロのスカウトは、両方できることはまったく評価せず、両方できても、どちらがプロレベルかと片方に絞って評価していた。でも大谷や私のような選手がMLBで成功すれば、スカウトの見方も変わるだろうし、現実に少し変わりつつある」と言う。

 ちなみにロレンゼンの二刀流は、試合中どのタイミングで、どのポジションで起用されるか分からない。同じ試合ですべてをこなすため準備も大変だと思う。次回で、彼が9月のルーティンをどうしていたか、二刀流をやってみて良かった点、懸念される点など、関係者の証言を書いていきたい。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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