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プロ野球20世紀の男たち

佐藤義則、星野伸之、野田浩司、平井正史&福良淳一、中嶋聡、田口壮……「ブルーウェーブの記憶」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

合言葉は「がんばろうKOBE」



 1988年に長い歴史を終えた阪急ブレーブスは、時代が平成となった翌89年、オリックス・ブレーブスとして再出発。91年には本拠地も西宮球場からグリーンスタジアム神戸へと移転、オリックス・ブルーウェーブとして新たなるスタートを切った。その4年後、95年。神戸の街を大震災が襲った。被災したナインも多く、ほとんどの選手が「野球をやれるわけがない」と覚悟したという。

 だが、この悲劇は、オリックスにとっては本当の意味でのスタートだった。仰木彬監督は「神戸で野球をやらせてもらう以上、明るい話題を与えなければならない。絶対、優勝しよう」と誓ったという。そして、「がんばろうKOBE」と袖に縫い付けたナインは力強かった。当時は西武の黄金時代だったが、6月には首位に立ち、後半は西武にも勝ちまくる。本拠地での胴上げこそ逃したが、オリックスとなって初のリーグ優勝。翌96年の連覇、初の日本一は、ともに本拠地で決めた。

 打線の中心だったイチローについては、すでに紹介しているが、92年に入団したオリックス組。一方、投手陣の中心にいたのは阪急の終焉を経験した星野伸之だ。130キロの“快速球”を操る異色の左腕で、オリックスでのラストイヤーとなる99年まで2ケタ勝利は11年連続を含む12度を数える。対照的に、剛速球で初優勝の95年に最優秀救援投手となったのが右腕の平井正史。入団2年目のオリックス組で、15勝5敗27セーブ、勝率.750はリーグトップで、新人王にも輝いた。

 その95年に最後の2ケタ10勝を挙げたのが野田浩司だ。ヤクルト野村克也監督をして「あれはオバケや」と言わしめたフォークが武器。阪神からの移籍組で、プロ6年目、オリックス1年目の93年に17勝で最多勝に輝く大ブレーク、翌94年には12勝、8月12日の近鉄戦(GS神戸)ではゲーム15奪三振でチームの先輩にあたる阪急の足立光宏らとプロ野球記録に並ぶ。そして、Vイヤーの95年には4月21日のロッテ戦(千葉マリン)で17奪三振の新記録。

1995年、ノーヒットノーランを達成したオリックス・佐藤義則


 投手陣の快挙は続く。先発は星野と野田、そして12勝の長谷川滋利が中心だったが、8月26日の近鉄戦(藤井寺)でノーヒットノーランを達成したのがプロ18年目、40歳11カ月の佐藤義則。阪急では若手だった星野に比べれば、85年に21勝で最多勝、翌86年には防御率2.83で最優秀防御率に輝いたバリバリの“勇者”だ。

 日本一は逃したが、ヤクルトとの日本シリーズではセットアッパーの小林宏が長距離砲のオマリーと14球に及ぶ名勝負を展開。日本一イヤーの96年には星野が13勝5敗、リーグトップの勝率.714で投手陣を引っ張った。

ブルーウェーブの14年


オリックス・田口壮


 阪急から連なる鉄壁の外野陣も健在だった。阪急で育った本西厚博が左右に従えて鍛え上げたのがメジャーでも活躍したオリックス組の田口壮、そしてイチロー。しぶとい打撃も持ち味だった本西の一方、強肩で鳴らした田口は勝負強い打撃でも貢献したが、勝負強さでは阪急を知る藤井康雄高橋智らパワーヒッターも負けていない。

 内野陣も阪急からの福良淳一、“西宮オリックス”からの小川博文の二遊間も堅実で、打っては福良が職人肌、小川も器用ながら秘めたパンチ力が魅力だった。日本一イヤーの96年には近鉄からの移籍組でスイッチヒッターの大島公一が二塁手としてブレーク。イチローのサヨナラ打で優勝を決めるホームを踏み、巨人との日本シリーズでは優秀選手に選ばれている。

 不動の司令塔は中嶋聡だ。90年に星野のスローボールを素手で捕ったエピソードも強烈だが、その強肩と、阪急の投手陣に鍛えられたリードも抜群。「メジャーに最も近い捕手」とも言われ、97年オフにFAでメジャーに挑戦したが断念、その後は3球団を渡り歩いて、2014年まで28年の現役生活をまっとうした。

 だが、オリックスは頂点を極めた96年を最後に栄光から遠ざかっていく。投手では金田政彦川越英隆、打者では谷佳知らが新戦力となったが、21世紀、近鉄との合併により、ブルーウェーブも14年という短い歴史を終えた。

写真=BBM
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