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プロ野球20世紀の男たち

マニエル、ヒルトン、ハウエル、オマリー、ブロス&ホージー「優勝の使者となった燕の助っ人たち」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

初優勝は赤鬼&ハッスルプレーヤーのコンビで



 1978年に初優勝、日本一を飾ったヤクルト。安田猛松岡弘ら投の左右両輪は以前にも紹介しているが、松岡が16勝、安田が15勝で、長身右腕の鈴木康二朗が13勝、勝率.813はリーグトップ。これに同じく右腕の井原慎一朗が10勝と続き、規定投球回に到達した4投手が2ケタ勝利に到達した。

 だが、防御率はトップ10に入ったのは伊原のみ。投手陣の勝ち星に貢献したのは、開幕から129試合連続得点という打線だった。三番の若松勉、四番の大杉勝男に続き、五番の“赤鬼”マニエルも打率3割を突破。そんな打線の起爆剤となったのが、やはり打率3割をクリアしたリードオフマンのヒルトンだ。

 マニエルもヒルトンも、大きな期待を受けて入団したわけではない。マニエルはメジャー通算4本塁打、ヤクルト1年目の76年も11本塁打だった。だが、2年目の77年に42本塁打を放って突然の覚醒。ヒルトンも78年のテスト入団で、当初ヤクルトは別の選手を獲得する予定だったが、その選手の夫人が猛反対、“消去法”での入団だった。クラウチングの打撃フォームは不格好で、「内角は絶対に打てない」と言われたが、これが意外と器用。どのコースも、そんな変化球も苦にせず、しっかり球を引き付けて広角に打ち分けた。

 そして、開幕から12試合連続安打、1試合を空けて、16試合連続安打。ボテボテのゴロでも全力疾走、主砲の大杉が「あの元気さには昔の東映っぽさを感じるな。俺も燃えてくるよ」と語るなど打線を刺激し、辛口の廣岡達朗監督をして「(ヤクルトの)スタートダッシュはアイツのおかげ」と言わしめると、優勝を逃した巨人長嶋茂雄監督は「今年はヒルトンのファイティング・スピリットにやられました」と脱帽した。

ヤクルト・マニエル


 だが、廣岡監督は「守れない、走れない選手はいらない」とマニエルをオフに放出、「あの守備では内野では使えない」とヒルトンにも厳しく、翌79年シーズン途中に廣岡監督は退任したが、オフに放出された。マニエルは新天地の近鉄でも初優勝の立役者となってMVP。一方のヒルトンは阪神で起用法を巡るトラブルの“火種”となってしまい、不遇のまま解雇された。近鉄の連覇に貢献したマニエルも契約がまとまらず81年にヤクルト復帰。だが、すでに全盛期の打棒は失われており、2年契約だったが、1年で解雇されている。

 ちなみにヤクルトはVイヤーの翌79年は一気に最下位へ転落。次の栄光は、野村克也監督が就任した90年代に入ってからとなる。92年に2度目の優勝、翌93年には初の連覇、2度目の日本一。その使者となったのがハウエルだった。

“ID野球”を彩った投打の助っ人


ヤクルト・ハウエル


 旋風を巻き起こして早々に去っていったホーナーの後釜として88年にプレーしたデシンセイの後押しで92年に入団したハウエル。後半戦に入ると日本の野球にも慣れて、38本塁打、打率.331で本塁打王、首位打者の打撃2冠、MVPに。西武との日本シリーズでは精彩を欠いたが、翌93年、同じく西武との頂上決戦では第1戦(西武)の1回表から先制3ランを放つなど雪辱。日本一に貢献した。

 王座奪還、3度目の日本一を果たした95年には首位打者の経験者ながら本塁打が少ないことで阪神を放出されたオマリーが四番に座って31本塁打、テスト入団のブロスが14勝を挙げるなど、投打の助っ人コンビが大活躍。ブロスは9月9日の巨人戦(東京ドーム)で1死球のみのノーヒットノーランでチームを加速させ、オリックスとの日本シリーズでも2勝を挙げる。一方のオマリーはペナントレース、日本シリーズともにMVP。第4戦(神宮)の延長11回裏に小林宏と繰り広げた14球に及ぶ名勝負は語り草だ。

 ヤクルトが5度目の優勝、4度目の日本一に輝いた97年に入団したホージーは20盗塁に加え、巨人の松井秀喜との争いを制して38本塁打で本塁打王。チームメートの古田敦也に“ブライアン”、池山隆寛に“ジェイジェイ”、野村監督には“クリントン”と、あだ名をつけまくり、お返しに“タロウ”と呼ばれるなど、陽気なチームカラーにもアジャストした。

写真=BBM
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