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来秋のドラフト上位候補、東海大153キロ右腕・山崎伊織が抱くソフトバンク2位・海野隆司への思い

 

東海大の153キロ右腕・山崎伊織は、早くも2020年のドラフトにおける「上位候補」にリストアップされている


 本調子でなくても、試合を作るのが、エースの仕事である。

 明治神宮野球大会(11月15日開幕)の出場2枠をかけた関東代表決定戦(横浜スタジアム)。東海大(首都大学1位)は関東学院大(神奈川大学1位)との初戦(2回戦、10月28日)を9回裏、6対5のサヨナラ勝ちで制している。

 東海大の先発・山崎伊織(3年・明石商高)は8回途中3失点(3対5)で降板。2番手投手が9回表に同点(5対5)に追いつかれたが、何とか次戦(準決勝)へとつなげた。

「初戦は大事なので、(1試合を)投げ切るつもりでしたが……。今日は(援護してくれた)皆に感謝です」

 山崎は1回表、中前打、犠打、中前打と、わずか7球で先制を許してしまう。今秋の首都大学リーグで44イニングを投げ自責点1(防御率0.20)と抜群の安定感を誇ったエースとしては、まさかの立ち上がり。試合前のブルペンでの調子は悪くなかったと言うが「様子見というか、最初からベストのピッチングができなかった」と悔やんだ。通常のリーグ戦とは異なり、負ければ終わりのトーナメント。必要以上に「浮ついてしまった」と、心のコントロールが難しかったようだ。

 とはいえ「さすが」としか言いようがない姿も見せた。0対1で迎えた3回表、先頭打者に右中間三塁打を浴びる。どうしても追加点を与えたくない場面でスイッチが入った。この日最速の151キロをマークするなど、トップギア。1四球は許したものの、後続を抑えた。流れを呼び戻した東海大はその裏、2点を挙げて一時勝ち越しに成功している。しかし、試合後、東海大・安藤強監督の表情は厳しかった。「要所では抑えたが、山崎には先発完投してほしかった」とエースに注文を出したように、終盤に追いつかれた苦戦の要因。しかし、期待の裏返し、でもある。

 この日、ネット裏には複数球団のNPBスカウトが視察。あるスカウトは「来年の上位指名候補です」と、マウンドに目を光らせた。最速153キロ。最大の武器であるスライダーを軸にカットボール、ツーシーム、シュートらすべての球種で勝負できるのが強みだ。

 今年は春、秋連続での首都大学リーグ戦でMVPを獲得すると、活躍の場は大学日本代表にも広がり、7月の日米大学選手権では優勝に貢献。飛躍の1年となったが、まだ、令和元年は終わっていない。成長を後押ししてくれた正捕手・海野隆司(4年・関西高、ソフトバンクドラフト2位)への思いがある。

「お世話になったので、最後は日本一で送り出したい」

 今年6月の全日本大学選手権は準決勝(対佛教大)で敗退し、その悔しさは、忘れられない記憶として残っている。明治神宮大会出場まであと1勝。「先発完投よりも前に、リズムよく3人で抑えていきたい」(山崎)。10月30日に予定される、準決勝に集中していく。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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