週刊ベースボールONLINE

大学野球リポート

兄は大谷翔平と同級生。卒業後はアナウンサーになる慶大・小原和樹がすべてを懸ける早慶戦

 

今秋打撃好調の理由は?


慶大の二塁手・小原はテレビ局に内定しており、大学卒業後、アナウンサーの道へ進む


 卒業後はバットを、マイクに持ち替える。

 慶大不動の二塁手・小原和樹(4年・盛岡三高)はテレビ局への就職が内定しており、アナウンサーの道へ進むことになっている。

 なぜ、この職業を希望したのか?

「テレビ局に勤務している野球部のコーチに勧められ、真剣に考えるようになりました。テレビを見ている人に対し、現場で起きていることをリアルに報道することに興味を持ちました。就職活動を通じ、さらにアナウンサーの仕事に興味を持つようになり、野球実況であれば、結果だけでなく、それまでの努力、1プレーへの思いを交えて言葉にする。僕にしかできない伝え方をしたいと思いました」

 兄・大樹さん(日本製紙石巻)は、花巻東高で大谷翔平(エンゼルス)と同級生でエースを援護する控えの左腕だった。弟・和樹は岩手の公立進学校・盛岡三高で、高校通算54本塁打。兄と同様、私学強豪校へ進学するルートもあったが、「逆にそういう人たちに負けたくない、と思うようになりました」と明かす。中学2年時、兄が高校2年夏の県大会決勝で盛岡三高に完封勝利(5対0)して甲子園出場を決めた試合を観戦し「ここなら、私立を倒せる。文武両道で、柴田(護)監督に教わりたいと思いました」と決意を固めた。

 高校3年夏は県大会3回戦敗退で、甲子園には届かなかった。大学は兄の背中を追い、AO入試で慶大環境情報学部に入学。だが、入学式直前に父・誠さんが他界。「厳しかったですが、いつも自分のことを考えてくれていた」。試合当日朝、野球部合宿所の自室の机上にある遺影に「行ってきます」と告げてから神宮球場へ向かうのがルーティンだ。

 1年春から出場機会に恵まれるも、定位置奪取には2年かかった。努力を重ねて、3年春からレギュラー。以降、規定打席に到達した今春までの3シーズンで打率は.250、.234、.250。一方、ディフェンスは今秋を含めても2失策と「守りの人」の印象が強かった。ところが、この秋は8試合で打率.345とリーグ2位につけている。ラストシーズン、打撃開眼の理由は?

「守備が精神安定剤なんです。シーズンを追うごとに自信が芽生えてきて、(無失策だった)4年春を終えた時点で『守りならば、誰にも負けない』と思えるようになりました。夏場は1日1000本以上振り込んで、打撃だけに専念して練習してきました」

 かつては、つなぐ意識が強く、どんなボールにも手を出していたが、今秋は球種を絞ることで自分のスイングを貫けるようになった。また右手は支えるイメージで持ち、バットをこねる三ゴロが減ったことも好調の要因だ。

現場の臨場感を伝えるのが夢


 開幕8連勝の慶大は11月2日からの早慶戦で優勝すれば、3季ぶり37度目の優勝が決まる。泣いても笑っても、小原にとって、真剣に野球と向き合うのは最後のリーグ戦である。昨秋は優勝まで「あと1勝」としながら早大3回戦で惜敗。小原は最終回、代打を告げられた悔しさがある。

「信頼されていなかったから、です。最後の秋は自分が決めるくらいの強い気持ち、気合で臨んでいきたいと思います」

 何としても有終の美を飾り、今秋でバットを置くが、アナウンサーとしての野望がある。

「社会人で野球を続ける選択肢もあったんですが、現役を終えたときに、果たして、やりたい仕事かと言えば、そうではないかもしれない。生涯、やりたい仕事で、野球とは違う道で、言葉のプロフェッショナルになる。入局後、どこに配属されるか分かりませんが、いずれはスポーツに携わりたいです。高校球児の夢舞台、甲子園で実況し、テレビを通じて現場の臨場感を伝えることが夢です」

 人前でしゃべるからには、責任が伴う。入念な事前取材をしてから、マイクの前に座りたいという。準備の大切さは、野球と一緒だ。今回のインタビュー中も終始、表情がさわやかで当然、滑舌も良い。小原にとって、アナウンサーとは天職かもしれない。近い将来、視聴者のハートをガッチリつかみ、お茶の間から支持を集める存在となるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング