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【MLB】仕事より家族優先 大きく変わったMLB社会の認識

 

妻の出産で優勝決定シリーズ第1戦を欠場したハドソンだったが、復帰後は見事な投球。第4戦でも最後のマウンドに立ち、ナ・リーグ優勝の胴上げ投手となった


 ナショナルズのクローザー、ダニエル・ハドソンが妻の出産に立ち会うために、10月11日、ナ・リーグ優勝決定シリーズ第1戦にチーム同行しなかった。ナショナルズには監督が信頼して使えるリリーフ投手が左腕のショーン・ドゥーリトルとハドソンしかいない。そしてその日の先発は4番手のアニバル・サンチェス。案の定、批判する人が出た。

 元マーリンズの球団社長デビッド・サムソンは「言い訳できるのは母親なり、赤ちゃんに何か問題があるときだけ。試合のあるセントルイスに行くべきだった」とツイートした。だがこのことで批判されたのはハドソンではなくサムソンだった。

「何を時代錯誤な」というのである。ハドソンは大事な試合を休まないで済むように準備はした。元々の予定日は14日。しかしながらその前の2度の出産は3、4日遅れて生まれており、ナ・リーグ優勝決定シリーズの終盤戦に重なる可能性が高い。それで陣痛促進剤を使って、ナ・リーグ優勝決定シリーズの始まる前日の10日にと考えた。

 ナ・リーグ地区シリーズは9日に終わったため、唯一の空き日になった。早朝7時の飛行機でロサンゼルスから妻の待つフェニックスに移動。とはいえ自然分娩のお母さん優先で夜まで待たされたし、促進剤を使っても産まれてくるには10時間以上かかる。結局、試合当日の金曜日に産まれてきた。

 ちなみにこれが10年前なら、休むのはとても難しかった。それが2011年に育児休暇のルールができ、選手は権利として1日から3日間チームを離れられ、チームもその期間、ほかの選手を補充できる。この制度を最初に使ったのはコルビー・ルイスだった。

 地元紙のコラムニストは「高給をもらっているのに」と批判したが、以後MLBでは毎年20数人がこの制度を使い、最近では当然のことという認識に変わった。しかしながら今回はポストシーズンで、より重要な試合。15年のプレーオフでブルージェイズのアーロン・ループ投手がチームを離れたときはポストシーズンは依然対象外で、ブルージェイズは24人で戦わねばならなかった。

 2016年にルール改正、今回ハドソンが一番手となった。球団はデイブ・マルチネス監督が「家族が最優先」と繰り返すように100パーセントのサポートしている。先発サンチェスが8回二死までノーヒットの快投で最後はドゥーリトルが4アウトをとって2対0の接戦をものにできたことはチームにとってもよかったことだった。

 監督はハドソンに「女の子に良い名前を見つけたよ、アニバラ・ショーン・ハドソンはどうだ」と祝福のテキストメッセージを送っている。ハドソンは12日朝6時の飛行機に飛び乗り、11時にセントルイス着。試合開始は15時で準備の時間は限られていたが、試合前の会見に駆り出された。一躍注目の人だった。それはもちろんこのことを話す必要があったからだ。

「この数日あまり寝られなかったし体は疲れている。でもチームのみんなが抱擁とハイファイブで迎えてくれて良かった」

 そして批判的意見には「みんなそれぞれに意見があるし、優先することも異なる。私は家族と家族との時間を大切にしている」と説明していた。

 この試合9回裏一死、3対1の場面で登板し5球で2つのアウトを取りセーブを上げた。居合わせた人たち(記者など)は概ね「今は昔とは違う」と、ハドソンの選択を受け入れていた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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週刊ベースボール編集部

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