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2019プレミア12

薄氷を踏む勝利。侍ジャパンはベネズエラ戦の教訓を生かせるか?【プレミア12】

 

殊勲打を放った菊池(右)と稲葉監督


 薄氷を踏むような勝利だった。

 稲葉篤紀監督となって、初めての大きな世界大会(プレミア12)、「たくさん点を取ることはできない」と覚悟して臨んだ11月5日のベネズエラとのグループBオープニングラウンド初戦(台湾・桃園)は、指揮官の予想どおりの重苦しい展開となった。

 開幕戦の先発を託された山口俊は、毎回走者を背負う苦しい投球も、4回まで5安打を浴びながら粘りの投球で1失点。最速148キロの直球を軸に、強化合宿期間で修正したフォークも駆使して6つの三振を奪った。「3者凡退のイニングがなかったので、良いリズムは作ることができませんでしたが、最少失点でつなぐことができたのは良かったと思います」と話すように、「イニングや球数ではなく、打者一人ひとりと向かい合って行けるところまで」とマウンドに上がっており、1点を失った4回限りで2番手・山岡泰輔にバトンを託したが、独特の緊張感の中で十分に責任を果たしたと言える。

 ただし、打線はベネズエラの先発で、メジャー通算31勝、2013年にはワールド・シリーズ制覇も経験している32歳左腕・ドゥブロンの前に、4回1安打と沈黙。188センチの長身からインステップ気味に踏み込み、球速こそ140キロ前後も、動いて威力のある直球が厄介で、これにカットボール、チェンジアップ、スライダーなどをていねいに低めに集められ、詰まった凡打を繰り返した。

 そんなドゥブロンが68球、4回限りで降板したことは、日本にとっては幸運だった。直後の5回に2点を奪って逆転に成功。6回に3点を許して再びリードを許したものの、打線は6、7回も得点圏に走者を進め、再逆転への機運を高めた。

 そうして迎えた8回だ。エスコバルの2連続四球に続き、代わったビスカヤも制球が定まらず、一死後、さらに2連続四球で押し出しの1点を手にすると、続く一死満塁の好機に、菊池涼介がストライクを取りにきた初球を逃さず左前へ。「(相手)ピッチャーもいっぱい、いっぱいだったと思いますし、その中で初球から打っていこうと。積極的に行ったのが良かったと思います。しびれる展開でしたし、ベンチはピリッとしたムードで、『ヤバい』と思っていましたけど、1点ずつという思い。みんなが1つになってつないだ点だと思います」と、5回に続くこの日2本目の殊勲の同点打を振り返った。

 8回はさらに2つの押し出し四球、犠飛、適時内野安打など打者一巡、12人の攻撃で6点を奪うビックイニングに。相手投手の乱調に助けられた部分も大きいが、残り2回の攻撃で2点を追う重圧の中での逆転劇に、稲葉監督は「打ちたい、打たなければいけないというムードの中で、我慢してつないでくれた」と8回の7つの四球(1つは申告敬遠)を評価した。

 投手リレーも同様だが、未知の相手との連続となる国際大会では、菊池、そして指揮官が言う「つなぐ」意識の大切さをあらためて認識する初戦となった。なお、翌6日(今夜)に行われる第2戦のプエルトリコ戦は、187センチ左腕・ソトの先発が発表されている。メジャー経験は6試合のみも、13、17年のWBC(いずれも準優勝)でも代表入りした経験豊富な投手。日本はベネズエラ戦の教訓を生かすことができるか。

文=坂本匠 写真=小山真司
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