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先発の規定投球回到達者数や完投数はどのように推移している?

 

 2019年シーズンに規定投球回(2015年以降は143回)に到達した選手は、セ・リーグが9人、パ・リーグが6人だった。ここ数年、先発投手の負担を減らすために長いイニングを投げさせることが少なくなっているが、規定投球回到達者や完投数はどのように推移しているのだろうか? 現在のチーム体制となった2005年以降の成績を調べてみた。

規定投球回到達者は2018年から極端に減少


今季、両リーグ最多の6完投をマークした広島・大瀬良


 まずは2005年以降の規定投球回到達者の数をまとめてみた。


 多いシーズンでは30人以上いた規定回数到達者だが、2013年以降は30人を超えたシーズンはない。2018年には20人を下回り、今シーズンは15人と2005年以降で最少となってしまった。

 ピッチャーの分業制が進んだ現在では、先発投手は消耗を抑えるために長いイニングを投げず、登板間隔も長く取ることが多い。そうなると、規定回数に到達する選手は自然と少なくなる。この流れが続けば、規定回数に達する選手はさらに少なくなるかもしれない。

完投数も今シーズンは非常に少なかった


 先発して最後まで投げきるのが少なくなると、当然ながら完投数も減ることになる。では、完投数は2005年以降どのように推移しているのだろうか。各シーズンごとの「規定到達者の完投数の合計」と「完投回数の平均値」をまとめてみた。


 2005年以降、最も多かったのが2006年の148回。その後は2011年に131回を記録するが、2006年をピークに完投数は右肩下がりの状況だ。2019年シーズンは、広島の大瀬良大地が完投6回と頑張ったが、それ以外は多くて3回と試合終了まで投げきるケースが極端に少なかった。そのため、総完投数は25回と2005年以降最低の数字となった

 過去の数字を見てみると、2012年は規定回到達者が33人と多く、完投数も90回あるにもかかわらず完投の平均値は2回台と低くなっている。この年はセ・リーグが規定回到達者は20人もいたが、そのうち5人が完投なし。そのため、平均値が大きく低下した。この2012年以降、規定回到達者が30人以下になり、完投数の平均も2回台に落ちている。

沢村賞の基準となる200イニングで見ると……


 その年に優秀な成績を残した先発完投型の投手に送られる「沢村賞」。その選考基準の一つが「投球回200イニング以上」だ。200イニング以上投げた投手をシーズンごとにまとめてみた。

※所属チームは当時のもの

・2005年
三浦大輔(横浜)214.2回
黒田博樹(広島)214.2回
松坂大輔西武)215回
JP(オリックス)200回

・2006年
三浦大輔(横浜)216.2回
川上憲伸中日)215回
井川慶阪神)209回
斉藤和巳ソフトバンク)201回

・2007年
セス・グライシンガーヤクルト)209回
涌井秀章(西武)213回
ダルビッシュ有日本ハム)207.2回

・2008年
セス・グライシンガー(巨人)206回
岩隈久志楽天)201.2回
ダルビッシュ有(日本ハム)200.2回

2009年、沢村賞に輝いた当時西武の涌井


・2009年
涌井秀章(西武)211.2回

・2010年
前田健太(広島)215.2回
久保康友(阪神)202.1回
ダルビッシュ有(日本ハム)202回
岩隈久志(楽天)201回
金子千尋(オリックス)204.1回
成瀬善久ロッテ)203.2回

・2011年
澤村拓一(巨人)200回
ブライアン・バリントン(広島)204.1回
前田健太(広島)216回
能見篤史(阪神)200.1回
マキシモ・ネルソン(中日)209.1回
田中将大(楽天)226.1回
ダルビッシュ有(日本ハム)232回

・2012年
前田健太(広島)206.1回
成瀬善久(ロッテ)200.2回

・2013年
田中将大(楽天)212回
金子千尋(オリックス)223.1回

・2014年
ランディ・メッセンジャー(阪神)208.1回
則本昂大(楽天)202.2回

・2015年
前田健太(広島)206.1回
大野雄大(中日)207.1回

・2018年
菅野智之(巨人)202回

 年間投球回200イニング以上投げたのは2005年以降37例ある。しかし、過去5年では5例しか到達者が出ていない。2019年もソフトバンクの千賀滉大が記録した180.1回が最多で、200イニング以上を投げた投手はいなかった。

 2005年以降のデータを見ると、先発投手の規定回数到達や完投数は2012〜2013年をピークに減少しており、ここ数年でその傾向がさらに顕著になっている。このトレンドが急に転換するとは考えにくく、来シーズンも規定回数到達者や完投数、200イニング達成者が増えることはないだろう。2019年シーズンを下回る数になることもありえる。

 ただ、先発ピッチャーが投げるイニングが減るとそれだけ中継ぎへの負担も増し、今度はこちらで故障者が出る可能性もある。単に先発の負担を減らせば良いというものではないのが難しいところだ。支配下登録人数は限られているため、先発と中継ぎの人数をどのように調整するかがポイントになるだろう。来季、ひいきのチームの投手陣がどのようになるかに注目してほしい。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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