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2019プレミア12

侍のアンダースロー高橋礼がチームに与えた好影響とは?【プレミア12】

 

11月6日のプエルトリコ戦で6回1失点と好投した高橋


 試合後、現役時代はMLB通算434本塁打で、2度のホームラン王にも輝いた実績を持つプエルトリコのフアン・ゴンザレス監督が脱帽する。

「(日本の先発)高橋が本当に素晴らしかった。チェンジアップが効いていて、ストライクゾーンの外、内にしっかりと投げ分けていた。これはなかなか打てるものではありません。彼のようなアンダースローの投手は、まれに国際大会では見ることはあっても、国内で対戦する機会はほとんどありませんから……」

 沖縄合宿中の、岸孝之の発熱による調整遅れの影響で当初のプランとは異なり、オープニングラウンド第2戦・プエルトリコ戦の先発を託された高橋礼は、6回1安打無失点1四球と完ぺきなパフォーマンスで起用に応えた。地を這うような特異の軌道のボールを投じるサブマリンは、過去の国際大会(1984年ロサンゼルス五輪金の吉田幸夫、2006、09年WBC優勝の渡辺俊介、13、17年WBC出場の牧田和久)でも対外国人、特に中南米のチームに大きな力を発揮してきたが、あらためてその有用性を証明したかっこうだ。

「自分の武器は真っすぐで押すことです。バットを折ったり、詰まらせたり、持ち味は出せたと思います」と話すとおり、18個のアウトのうち、実に14個がゴロアウト。「内角を突くことができた結果だと思います。腕を伸ばして打つバッターはいますけど、たたんで打つのは難しいかなと」とマウンドでも冷静だった。これには稲葉篤紀監督も「140キロ出ない真っすぐでも、(プエルトリコの)力の強いバッターが差し込まれている。緩急、高低を使いながら、素晴らしい投手だなとあらためて思いました」と絶賛した。

 ソフトバンクでバッテリーを組む甲斐拓也の存在も大きかった。データが少ない相手だったが、「シーズンと同じように、高橋の、自分のピッチングをしっかりできるように、そして僕があの場に立って、感じることも大切にしました。まずは真っすぐを(内、外とコーナーに)投げ分けること。高低(のメリハリ)も有効」と丁寧にリードし、例えば4回、三番のオルティズに対しては低め、高めの直球2球でファウルを打たせて追い込み、最後は133キロの高めの真っすぐでこの日、最初の三振(空振り)を奪っている。

 リズムよく打たせて取る高橋の投球は、バックにも好影響を与えていた。日本は3回にプエルトリコのミスに乗じてチャンスを広げ、四番・鈴木誠也の3点本塁打で一挙4点を挙げているが、守っては普段とは勝手の違う台湾の球場でもノーエラー。「高橋のようにどんどんゴロを打たせるピッチャーだと、内野は集中力が増します。集中力が増せば、ミスは減りますし、坂本(勇人)にしても、菊池(涼介)にしても、難しいゴロもありましたが、しっかりとさばいていました。今日の試合は相手のミスから得点をしましたが、日本はしっかりと守った。バックが確実に守ればピッチャーも乗る」と井端弘和内野守備走塁コーチもその相乗効果を認める。

 高橋は6回73球と余力を残した状態で降板したが、日本はその後も集中力を保ったまま、残り3イニングを4人の継投で、一度も三塁を踏ませることなくプエルトリコをゼロ封。稲葉監督は常々「投手を中心とした守りの野球」を日本のストロングポイントに挙げているが、まさに日本の強みを存分に発揮した勝利でスーパーラウンド進出を決めた。

文=坂本匠 写真=小山真司
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