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2019プレミア12

収穫は投手。スーパーラウンドでも侍の強みを前面に押し出して戦う【プレミア12】

 

勝因は投手陣の粘り


粘りの投球で3回無失点だった先発の今永


『WBSC プレミア12』オープニングラウンドのグループBは、11月7日に最終戦となる第3戦が行われ、連勝で突破を決めているチーム同士の対決となったチャイニーズ・タイペイ戦に、日本は8対1で勝利を収め、3戦全勝で1位通過を決めた。

 結果的に大差がついたが、チャイニーズ・タイペイ打線は稲葉篤紀監督が試合前に警戒感を示したとおり強力で、日本の投手陣は11本のヒットを許し、5イニングで得点圏に走者を進められている。序盤に得点を許していれば展開は変わっていたが、危機を迎えてからの投手陣の粘りが、この試合の勝因だった。

 まず先発の今永昇太だ。鈴木誠也の適時三塁打、吉田正尚の適時打で2点の援護を得た初回二死一塁。四番の林泓育にストレートを完璧にとらえられ、「打った瞬間入ったと思った」と言う当たりは、強風に戻されフェンス直撃打に。サク超えを確信して歩を緩めた一走・王威晨のボーンヘッドにも助けられ、「運があるな」と切り替えた。続く朱育賢を左飛に打ち取ってこのピンチを切り抜けると、3回に一塁・山田哲人のエラーと2つの安打で迎えた一死満塁のピンチも、三直、空振り三振で切り抜け、「あそこでバタバタしているようではダメですね。抑えられたのは良かったですけど、反省と半々くらい」と冷静に振り返った。

 4回からはここまで第2先発として待機していながら、登板のなかった大野雄大に早々に交代。大野は任された2イニングともに2人の走者を背負うなど4安打を許したが、「4点のリード(3回に鈴木が2点本塁打で加点)がありましたし、最悪ホームランでも1点勝っているという余裕がありました。一人ひとり冷静に」と落ち着いたマウンドさばきを見せた。

 4回には一死一塁から日本ハムに所属する王柏融に右前打を許し、鈴木の好返球で一度は三塁封殺と判定されたものの、長時間の検証の末に覆えったが、「僕、ああいうときは絶対にひっくり返るので、覚悟をしていました。セーフならと想定して待っていた」と集中力を切らさず。一、三塁となった場面も九番の王勝偉を内角のストレートで見逃し三振を奪うと、続く王威晨にもストレートの力勝負で中飛に打ち取り、危機を脱した。5回も一死一塁から併殺を狙ったショート・坂本勇人の目前でイレギュラーする不運な安打などで二死一、三塁のピンチを迎えたが、後続を断ち、超満員の敵地のファンにため息をつかせた。

 走者を背負いながらもここ一番でギアを上げて得点を許さない日本の投手陣に対し、6回以降はチャイニーズ・タイペイ打線も沈黙。9回に山本由伸が1点を許したが、8点の援護点もあり大勢に影響はなかった。

稲葉監督の攻めのプラン


オープニングラウンドのグループBを3戦全勝で1位通過を決めた侍ジャパン


 粘り強い投球を見せた投手陣に対し、建山義紀投手コーチは「走者を背負う場面は多かったですが、四球を絡めていないところが大きかったと思います(※日本は無四球)。序盤に4点のリードもあり、安打を許しても余裕がありますから、リズムを崩すこともありませんでした。経験も、力もある選手たちで、あのような状況での対応にも慣れている。走者を出してからも落ち着いて対処してくれたと思います」と評価した。

 先発の今永を3回で降板させ、以降、5人の投手を惜しげもなくつぎ込んだ継投は「(チャイニーズ・タイペイ打線に)とらえられる前に、早め早めに代えていこう」という稲葉監督の攻めのプラン。これが見事にハマったと同時に、ここまで登板のなかった大野、発熱の影響で調整が遅れ、オープニングラウンドでの先発を回避していた岸孝之の調整登板も8回に実行。前夜まで2連投の山崎康晃を休ませつつ、山本由伸をクローザー起用でテストするなど、11日から日本で行われる、スーパーラウンドを見据えての準備も万全といえる。

 オープニングラウンドでの収穫を問われた指揮官は「投手」と即答しており、スーパーラウンドでも手応えを深めた日本の強みを前面に押し出して戦うこととなる。

文=坂本匠 写真=小山真司
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