昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 またも、バッキーは101勝目が遠し……
今回は『1969年7月7日特大号』。定価は80円。
6月15日の
巨人戦、
中日の
小川健太郎が巨人・
王貞治に対し、誰も見たことがない珍しい投げ方をした。
いわゆる背面投げ。腕をバックスイングした際(小川は右投げ)、左腰あたりから球を投げ、腕はそのままオーバースローのように振っていくというものだ(小川は本来サイド)。
王は「あれっと思う間にボールが来たよ」というからストライクなら見送ったのだろうが、この試合で二度投げて、いずれもボールだったようだ。
その場の思いつきではなく、試合前、審判にこの投げ方は不正投球にならないかどうかを確認し、
水原茂監督には実際に投げてみせ、許可をもらった。ちなみにこのときはしっかりストライクが入ったという。
試合後、小川は報道陣に、
「どう? アイデアはよかっただろ」と言った。
もともと小川は軸足がすっと立った時点で、どのような投げ方でもストライクが入る自信があったという。
「目をつむってもストライクがほうれる。ただ、目をつむったってスタンドは分からないからな。だいぶ前に思いついて練習をしていたんだ」
この投げ方に賛否両論。「野球への冒涜だ」「野球をなめるな」という声も多かったが、巨人サイドは意外と好意的。
牧野茂コーチは、
「あれは面白い。相当練習しないと投げられないよ」
と感心していた。おそらく現場の人間であるほど、この背面投げがいかに難しいか、分かっていたということだろう。
前回に続き、バッキーの勝ち運がない話。
6月15日の
ロッテ戦に先発したバッキーは6回被安打2の快投ながら試合は0対1で敗れた。
この1点は、5回二死から代走で出た
飯島秀雄に二盗を決められ、さらに三盗を試みられた際、捕手の悪送球でホームまでかえってきたもの。いまだシーズン未勝利。
「勝利の女神はどこにいるんだ」
と嘆いていた。
プレミアの周東ではないが、飯島という選手は使い方によってはもっと光ることもできたのかもしれない。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM