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2019プレミア12

淡白な侍ジャパン打線。復活へのヒントは浅村栄斗の打撃にあり【プレミア12】

 

想定外の一報に……


アメリカ戦で3安打、3打点をマークした浅村


■プレミア12「スーパーラウンド」
アメリカ4対3日本=11月12日(東京ドーム)

 用意周到に準備を進めてきたアメリカの前に、日本は今大会5試合目にして初黒星を喫した。3対4での惜敗に、稲葉篤紀監督は「負けた全責任は私にあります。選手は目いっぱいやってくれました」と話したが、アメリカの予告先発変更という不測の事態に対応し切れず。打線はその後も小刻みな継投の前につながりを欠き、4失点と踏ん張った投手陣を援護することができなかった。

 想定外の一報が入ったのは球場入り直前のことだ。前夜に予告されていたハウクが「コンディション不良」を理由にマーフィーに変更。日本サイドに知らされたのは、試合開始のおよそ4時間前だという。その後、ミーティングが開かれているため、金子誠ヘッドコーチ兼打撃コーチは「影響はありません」と強調したが、変更されたマーフィーは前夜(11月11日)のオーストラリア戦(ZOZOマリン)で2安打(うち1本は鈴木誠也の本塁打)と苦しんだ先発・ルジッチと同じく、右サイドの変則タイプ。予告先発の変更は大会本部が正式に認めたものだが、「オーストラリア戦も見ているでしょうし、そういう投手をどんどん当ててくる」と稲葉監督も話したとおり、マーフィーを選択したことにはアメリカ側の意図があった。

 テークバックが小さく、間合いが取りにくいうえに、150キロに迫るストレートと、球速のあまり変わらない高速シンカー(ツーシーム)に日本は手も足も出ず。マーフィーが3回で降板するまでに3つの四球を選んだのみで、この間に2点を先制され、流れをつかむことができなかった。その後は4、6、8回と1点ずつを奪うも、細かい継投で目先を変えられ、畳みかけることはできず。アメリカのブローシャス監督は「特にシンカー系の投手を多く使いました。多くのゴロを打たせることができたと思います。投手陣は良いパフォーマンスを出してくれました」と話したが、日本は彼らの思惑どおりに沈むツーシーム系のボールを操る投手の前に凡打を繰り返した。

 常に追いかける展開の中で、これまで大切にしてきたつなぎの意識が欠如していたことも忘れてはならない。例えば、2点を追った4回一死三塁の場面では、アメリカは前進守備ではなく通常の守備隊形。ゴロを転がせば確実に1点という状況も、打席に立った吉田正尚はいとも簡単に浅い左飛を打ち上げた。その後、浅村栄斗に右前打が出てこの回は1点を奪っているものの、同様のシーンは7回一死二、三塁でも見られた。この場面も2点の差があり、内野陣は通常の守備隊形。「転がせば……」の状況だったが、途中から出場の山田哲人は左飛を打ち上げ、この回は無得点。1点差で敗れたのは結果論だが、「コツコツと1点を積み上げていく」のが今大会で稲葉監督が再認識した、日本が目指すべき攻撃ではなかったか。

シンプルな浅村の発想


 鈴木誠也の中堅越えの二塁打を足掛かりに、浅村のこの日3本目の適時打で1点差に迫った8回の攻撃も、その浅村に切り札・周東佑京を起用して同点を狙ったが、二盗で一死二塁とした直後に、坂本勇人が三振はあまりにも淡泊。この日、3三振と当たりのない坂本だからこそ、「転がせば」の発想が欲しかった。続く会沢翼も右飛に倒れ、稲葉監督の勝負手は不発に終わった。

 この日、3安打の浅村の打撃の内容に「逆方向へのヒット。こういう打撃がこれからのヒントになるのではないか」と稲葉監督。浅村と当たりの出ていない選手の差について金子コーチは「(ボールを)追いかけてしまうか、(自分の間合いで)待てているか」と話す。ただ、浅村の発想はもっとシンプルだ。「低めはしっかり見極めて、自分が打てるボールだけを、と考えていました。ボールが小さく動くとかありますが、打てるボールを逃さずに、確実にとらえることが大事」と、国際大会であってもペナントレース中と変わらない姿勢であることを強調した。

 打線につながりが生まれていない現状に指揮官は「打線の組み方、そこもこれからもう少し考えていく必要があるのかなと思っている」と13日に戦うメキシコ戦でのオーダー変更を示唆。敗れれば自力での決勝進出(上位2チーム)が消滅する可能性がある一戦での、稲葉監督の決断に注目したい。

文=坂本匠 写真=川口洋邦
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