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周東佑京は有力なオリンピック代表候補

 

11月11日のオーストラリア戦で貴重な1点をもぎ取る好走塁を見せた侍ジャパンの周東佑京


 11月11日から日本に舞台を移して行われているWBSCプレミア12のスーパーラウンドで、日本は12日のアメリカ戦(東京ドーム)を3対4で落とし今大会初黒星を喫したものの、翌13日(東京ドーム)に全勝だったメキシコを破り、17日に東京ドームで行われる決勝進出に向け大きく前進した。

 16日にはスーパーラウンド最終戦の韓国戦(東京ドーム)を残しているが、日本は2009年のWBCを制して以来、世界大会(トップカテゴリー)での優勝から遠ざかっていることもあり、世界一奪回に注目が集まっている。

 同時に、今大会は来夏に迫った東京2020オリンピックに向けての、選手の見極めの場でもある。プレミア12は28人の選手で戦っているが、オリンピックの登録人数は24人。侍ジャパンの稲葉篤紀監督は「プレミア12のメンバーが東京オリンピックのベースとなる」ことを明言しているが、ここにはケガやコンディション不良によって出場を辞退した選手は含まれておらず、当然彼らも候補に挙がる。また、ペナントレースを中断して行われることもあり、状態の良い選手を優先することも考えるべきで、開幕後に群を抜いたパフォーマンスを見せた選手を指揮官がチョイスすることも考えられるだろう。

 そのような中で、大会直前の強化合宿、強化試合、そして本大会を通してプライオリティーを高めているのがソフトバンクの周東佑京ではないか。

 2018年に育成選手として入団した周東は、今季開幕直前の3月26日に支配下昇格を勝ち取ったばかり。開幕から野手に故障者が相次いだこともあり、早々に一軍昇格すると、足でチームに貢献。主に昇格直後は先発起用も多かったが、次第に代走、守備固めとして重用され、最終的にはチームトップの25盗塁を記録、ポストシーズンでも足でかき回し、一躍注目を集める存在となった。。

 大会前、稲葉監督は周東の代表初選出について、次のように語っている。

「今回メンバーを決めるにあたって、試合終盤での1点、これが非常に大事になってくると考えました。私が掲げている“スピード&パワー”のスピードという部分がこれに大きくかかわってくると思うのですが、所属のソフトバンクで終盤に代走から出場し、警戒されている中でスチールを決められる、そして、二塁に進めばワンヒットでホームにかえってこれるスピード、脚力はとても魅力的です。周東選手の力が、この侍ジャパンでも必要と思いました」
 
 テストの意味合いが強い選出ではあるが、周東は指揮官の期待どおりの働きを見せている。当初は稲葉監督も使いどころに頭を悩ませていたが、大会を通してリリーフ陣が好調なこともあり、ビハインドの試合では終盤の同点のランナーとして代走に送り出す機会が増えた。ここまでのハイライトは11月11日のオーストラリア戦(ZOZOマリン)だろう。1点のビハインドを背負って迎えた7回に代走で出場。二盗、三盗を決め、二死後に源田壮亮の意表を突くセーフティスクイズに反応し、同点のホームを踏んだ一連のシーンは、大きな話題となった。

 ペナントレースとは異なり、国際試合ではデータの少ない投手との対戦の連続となる。特に今大会では日本打線はツーシーム、速いシンカーを操る投手や、変則的なフォームの投手に苦戦しており、終盤まで重苦しい展開が続く。四番に座る鈴木誠也の3本のホームランに助けられている部分も大きいが、連打が望めない、打てない状況で得点を挙げるのに、足を使った攻撃が有効なことが、“切り札”周東によって証明されたのではないか。

 大会前、稲葉監督は周東の脚力に期待する一方で、出場メンバーが絞られる東京オリンピックでの“スペシャリスト”の招集に関しては言葉を濁した。しかし、今大会を通じて国際大会での1点の重みを再認識させられたことで、選考の優先順位が変わる可能性が高い。“お試し”での招集の意味合いが強かった周東は、自らのパフォーマンスで東京オリンピックの有力候補に浮上した。

文=坂本 匠 写真=高原由佳
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