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ベースボールゼミナール

一塁帰塁で菊池涼介はどうすればよかった?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.5月4日の広島対巨人(マツダ広島)で、起こったプレーについて質問です。1回裏一死(無走者)、菊池涼介選手はショートゴロを打ち、一塁に走りましたが、これをさばいた坂本勇人選手の送球が高く逸れたため、ファーストの中島宏之選手がジャンプ、ベースから足が離れました。一塁ベースを踏んだ菊池選手は、中島選手との衝突を避けようとして、フェアグラウンド側に倒れ込み、一塁に戻ろうとして頭から戻りましたがタッチされ、アウトと判定されました。この場合、走者はどうすればよかったのですか。(埼玉県・29歳)



A.起き上がり、何事もなかったように帰塁すればよかった。頭からベースに戻る行為が紛らわしく「=進塁の意思」に


一塁に頭から戻ったがアウトになった菊池


 少し前の試合ですが、ニュースでも取り上げられたプレー(このプレーに対しての緒方孝市監督の抗議、リプレイ検証、退場でも話題になりました)ですので記憶されている方も多いと思います。非常に微妙なジャッジだった、というのが正直な感想です。

 まず、このような場合、バッターランナーは一塁ベースを一塁線の外側へと駆け抜けるのが基本です。しかし、質問のケースでは逸れた送球を捕球しようとしてジャンプした中島選手と接触しそうになったため、外側ではなく、これを避けてベースを踏んだ後に内側(つまりグラウンド側)に倒れ込みました。ここまでのバッターランナーの動きにおかしなところはありません。内側に倒れ込んだのも、一連の流れを見ていれば仕方がないことと分かるでしょう。

 問題があったとすれば、この後です。内側に倒れ込んだ行為自体はオーバーラン(オーバースライド)に当たるので、公認野球規則5・09(b)(4)の【例外】にある「打者走者が一塁に走るときは、ただちに帰ることを条件としてならば、オーバーランまたはオーバースライドして一塁を離れているとき触球されても、アウトにはならない」が適応され、そのまま一塁に生きることができたはずです。菊池選手はそのまま起き上がって何事もなかったように一塁ベースに戻ってくればよかったのですが、慌てたように頭からベースに戻ったのが問題でした。それにとっさに反応した一塁手の中島選手にタッチされ、「アウト」に。

 規則のとおり、速やかに戻っただけと広島側(菊池選手も二塁に行く意識はなかったと言っています)は主張しましたが、橘高一塁塁審は菊池の走塁について「二塁へ向かう意思を見せたと私は判断した」と説明しています。二塁へ向かう意識があったようには感じられませんでしたが、ランナーとしてどうすべきだったかを考えると、やはり、頭から戻ったことが反省点になるのではないでしょうか。

 あの行為で「二塁へ進塁する意思があったから、危険を感じて素早く頭から戻った」と思われても仕方がないのかもしれません。紛らわしいといえば紛らわしい行為で、今後の反省として生かすならば、あわてて戻る必要がなかった、ということです。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2019年10月14日号(10月2日発売)より

写真=BBM
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