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【MLB】史上初ドラフトトップ指名選手がワールド・シリーズMVP

 

ナショナルズの快進撃と、崖っぷちのどちらの状況でも落ち着いた投球でチームを世界一に導いたストラスバーグ


 ナショナルズが球団史上初の世界一。ワールド・シリーズMVPに輝いたスティーブン・ストラスバーグは会見でこう語った。

「逆境が強い人間にしてくれた。自分自身について学べたからね。大事なのは自分がコントロールできるものに焦点を絞ること。完ぺき主義で何でもコントロールしたいタイプだけど、実際のゲームではそうはいかない。ただ試合にどうアプローチするか、フィールド外でどういった準備をするかは自分ですべて決められる」

 2009年「ドラフト史上最高の選手」と持ち上げられ、鳴り物入りでプロ入りしたが、若いころは多大な期待にどう応えればいいか分からなかった。

「ここまで来るにはプロセスが必要だった。注目されて、ああだ、こうだと言われると、よく分からなくなる。でもいろいろ経験して、自分なりに対処できるようになった。優先すべきはクラブハウスの仲間であり、妻や2人の娘であり、自分を支えてくれる人たちなのだと」

 12年、チームは98勝64敗と公式戦で好成績を残し、ワールド・シリーズ出場の本命と言われた。ところが当時24歳のストラスバーグをポストシーズンはシャットダウン。トミー・ジョン手術から復帰した年で、イニング数を制限していたからだ。この決断は物議を醸した上、トップ投手を欠いたチームは、地区シリーズでカージナルスに敗れた。当時のチ―ムメートで唯一、今も残っているライアン・ジマーマン一塁手は「選手はみんな投げてほしかった。本人もそうだっただろう。それぞれ意見はあるだろうけど、この球団が個々の選手のキャリアを大事にしてくれているのは確かだった」と振り返っている。

 今季31歳、初めてワールド・シリーズの舞台に立ったストラスバーグは負けない投手になっていた。第2戦は6回2失点でジャスティン・バーランダーに投げ勝ち、2勝3敗と崖っぷちに追い込まれた第6戦は9回一死まで投げ、5安打2四球2失点で再び勝利。今季のポストシーズンは通算5勝0敗で、勝ち負けで言えば、史上最高の成績となった。

 第6戦の試合後、デーブ・マルチネス監督は「大舞台でストラスバーグがまたやってくれた。みんなを救ってくれた。試合後、君のおかげで第7戦に行けると告げた」と話している。事前の予想でアストロズが圧倒的に有利と言われたシリーズをひっくり返せたのは、ストラスバーグの右腕のおかげ。投手がMVPに選ばれるのは29度目(27人目)で右投手では03年のジョシュ・ベケット以来だ。さらにドラフトトップ指名選手が、ワールド・シリーズMVPになるのは初めてだった。時間はかかったが、大きな期待に応えた。.

 ピッチングの軸はツーシームとチェンジアップだ。同じような軌道を描きながら約8マイル(約13キロ)の速度差がある。その上で、パワーカーブが有効。追い込んだら、ボールになるカーブを振らせ、カウントが悪いときはゾーンに入れてストライクを取る。

 第6戦の5回一死二、三塁のピンチ。ホセ・アルトゥーベを2ストライクと追い込み、ワンバウンドのカーブで空振り三振に討ち取った。

「べストの打者にこういう場面でしっかり投げられるように準備してきた。1球1球に集中して投げられた」

 近年のMLBの投手では、カート・シリング、マディソン・バムガーナーに並ぶミスター・オクトーバーの活躍だった。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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