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投げたい気持ちをグッと抑えた2020年ドラフト上位候補右腕【明治神宮大会】

 

2020年、ドラフト上位候補の東海大・山崎は明治神宮大会で登板機会なく、チームは準決勝(対関大)で敗退。試合後は悔しさをにじませ涙を流し、目を真っ赤にさせていた


■明治神宮大会「準決勝」
関大8対7東海大=11月19日(神宮)

 東海大は関大との明治神宮野球大会準決勝(11月19日)で、延長10回タイブレークの末に敗退(7対8)。6月の全日本大学選手権に続き、決勝を目前にして涙をのんだ。

 エース右腕・山崎伊織(3年・明石商高)は3試合、1球も投げずに大会を終えている。

 153キロ右腕は、2020年のドラフト上位候補。今年7月の日米大学選手権では大学日本代表として、3大会ぶり19度目の優勝に貢献した。今秋のリーグ戦では44イニングを投げて自責点1の防御率0.22(4勝0敗)と圧倒的な数字を残している。首都大学リーグ戦では春秋連続でMVPを受賞。伝家の宝刀・スライダーのキレは、球種が分かっていても打てない高いレベルにある。

 明治神宮大会出場をかけた関東学院大との関東代表決定戦初戦(2回戦)で、8回途中3失点。上武大との準決勝で5回無失点と本大会出場へ導いて以降、マウンドから遠ざかった。疲労性による右ヒジの違和感。大会本番に向けて調整を続けてきたが、キャッチボールのみで、ブルペンには入れず。今大会は大事を取って、登板回避となった。

 山崎は試合後、目を真っ赤にさせて取材スペースへとやってきた。

「悔しいです。4年生が涙を流している姿を見たら……。投げたい気持ちはありましたが、そこはグッと抑えました。来年もありますが、この大会にかけていた。4年生にもお世話になったので……。投げるのは厳しい状態だったので、いつもは応援してもらう側。自分の声、ベンチワークでチームにサポートできるようにしてきました」

 今大会は3試合で19失点。エース不在の戦いはやはり、痛かった。ソフトバンクから2位指名を受けた正捕手・海野隆司(4年・関西高)が懸命のリードも、及ばなかった。

「良いキャッチャーでした。海野さんのほか、4年生は自分を成長させてくれた。春、秋ともベスト4。あと1つ、2つ勝つのは難しい。先(優勝)が見えたところで勝ち切れていない。何が足りないのか? しっかり考えて、成長してここ(神宮)へ戻ってきたい」

 主戦投手として敗戦の責任を感じているが、ここで無理をする必要はない。11月30日からの日本代表候補選考合宿(松山)に選出されているが、準決勝終了後の段階では参加する予定だという。ただ、今年1年における十分なキャリアもあり、あらためて猛アピールする立場の選手ではない気もする。

「(来年は)勝負なので。どれだけできるか。タフさが足りないので、強い体を作っていく。自分に厳しくやっていきたいです」

 今こそ我慢、である。今後の野球人生を見据えれば、最善の選択だった、と振り返るときが必ず来るに違いない。神宮で流した涙を、絶対にムダにはしない。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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